山あいの町・鳥取県八頭町で、地域の高齢者たちが営む「ひだまりカフェ」が静かな話題を呼んでいる。築50年を超える古民家を改装したこのカフェは、手作りのケーキや淹れたてのコーヒーが人気だが、もう一つの自慢は“ご近所発電所”の電気で営業していること。町の経済と環境、そしておばあちゃんたちの笑顔を灯す新たな挑戦が始まっている。
ひだまりカフェを切り盛りするのは、町内在住の女性たち8人。最年長の米田ハル(78)は、かねてから「孫たちに残したいものはなんだろう」と考えていた。ある日、カフェの常連客で環境団体職員の国吉慎一(33)がふと口にした。「屋根に太陽光パネルを乗せませんか?発電した電気をカフェで使い、余った分は売電もできますよ」。この一言をきっかけに、町の小さな挑戦が始動した。
初夏の休日、8人の“太陽の仲間たち”は手作りの発電所づくりに汗を流した。近所の高校生や農家の男性たちも、自然に手伝いに集まった。太陽光パネルの設置作業は、まるでお祭りのような賑やかさ。パネルが屋根に並んだ瞬間、みんなで手を取り合って喜んだという。発電が始まると、カフェはさらに活気づいた。「私たちの出したクッキーが太陽でできた電気で焼けたって思うと、孫に自慢できるのよ」と笑う米田さん。
カフェが使う電力のほぼすべてを、この小さな発電所がまかなっている。しかも余った電気は、町の児童館や診療所にも回されている。「子どもたちも、僕らも、おばあちゃんたちに元気をもらってます」と児童館スタッフもにっこり。町では、売電による収益の一部を、地域の福祉活動や小学校図書の購入にも充てている。
「自分たちの手で電気をつくるって、こんなにうれしいんだね」。SNSでは、カフェの投稿に全国から応援コメントが寄せられている。「今度は私の町でもやってみたい」「クリーンなエネルギーって、優しさの循環だと思う」などの声も。再生可能エネルギーと人のつながりが、町の経済に新しい明るさをもたらしている。
地元のSDS(持続可能な開発研究会)の専門家・三宅友治(46)は「持続可能な脱炭素社会は、特別な企業や先端技術だけでなく、日常の小さな経済活動から始まります。誰かの『やってみよう』が、こんな幸せな経済循環につながることを実感しました」と語る。ひだまりカフェのやわらかな灯りは、いつも地域の未来を照らしているようだ。
コメント
小学生の娘と一緒に読んで、心がぽかぽかしました。地域みんなで力を合わせて何かを作り上げるって素敵ですね。いつか親子でひだまりカフェに行って、おばあちゃんたちのケーキ食べに行きたいです!
いやぁ、元気なご婦人方ですねぇ。私の住む町にも、こんな明るい話題が広がればいいなぁ。太陽の力でお茶するなんて時代が進みましたな、昔では考えられないです。応援していますよ。
発電所作りに地元の高校生も参加したって聞いて、なんか誇らしい気持ちになりました!自分たちの行動が町を元気にできるんだって、勇気もらえます。次は自分も何か挑戦してみたいな。
ひだまりカフェの近くに住んでいます。ときどきお散歩がてら寄るのですが、いつもおばあちゃんたちの笑顔に癒されてます。電気まで自分たちで作ってたとは…ますますファンになりました♡
素晴らしいです!町が一体となって取り組む姿、そして余った電気を児童館や診療所に分け合う優しさ。これぞ本当の“地域力”ですね。他の町でもぜひ参考にしたい取り組みだと思いました。