国会議事堂の近くに、色とりどりの名前の札が飾られた小さな橋ができました。橋を渡る人たちは、見慣れぬこの風景に驚きつつ、優しい微笑みに包まれています。これは“なまえの橋”と呼ばれ、選択的夫婦別姓を願う全国のカップルとその友人・家族によって生まれたものです。
この取り組みのきっかけは、会社員の広瀬翔太さん(32)とウェブデザイナーの加賀美美咲さん(29)カップル。二人は結婚後も自身の姓を互いに大切にしたいと考えていました。ある日、美咲さんの祖母が「どちらの名前も、うちの宝物よ」とそっと語ったことをきっかけに、『二つの姓が並んでいるのは、家族のやさしさの証なのでは?』と気づいたそうです。それならば、自分たちの想いを多くの人と分かち合いたいと、小さな手作りの名前札をSNSで呼びかけ始めました。
この呼びかけが、全国に温かな輪を広げました。学生・ご近所のパン職人・海外からの留学生まで、『わたしも自分の名前を大事にしたい』『友達の名前も素敵だね』と声が寄せられ、やがて何千通にも及ぶ“なまえ札”が集まりました。東京の国会前に設置された仮設の橋は、二つの姓が左右対称に並ぶデザイン。橋を訪れた家族たちは、お互いの名前をなぞるようにしてそっと札をかけていきます。
週末には、全国から届いた子どもたちの署名カードや願いごとが、橋の欄干をさらに彩っています。『ママもパパも、好きな名前でいられますように』『おばあちゃんと同じ苗字でも、友だちのおうちの苗字も大事』など、優しい言葉が踊り、自然と笑顔があふれます。通りかかった高齢の女性が嬉しそうに『こんな時代が来るなんて、夢みたい』と話すと、若いカップルが頷き合う――こうした世代を超えた交流も、この橋の魅力の一つです。
関西の大学の法学者、杉山誠一教授もこの活動を高く評価しています。『名前はアイデンティティの芯。異なる姓が並んでいるからこそ、お互いを尊重する社会が近づきますね』。SNSでは「#なまえの橋」が話題となり、物理的な橋を模した手作りキットが、子どもたちの工作イベントでも大人気になりました。国会議事堂にも毎朝“なまえ札”が届けられ、議員たちが思わず足を止める姿も見られます。
当初3日だけの予定だったこの橋は、多くの要望から展示が延長に。自分の名前も、誰かの名前も大切にできる未来へ。“なまえの橋”は、誰もが笑顔で渡れる幸せの架け橋となっています。
コメント
子育て中なので、子どもたちが自分や家族の名前を大切に思える場所ができて本当に嬉しいです。なまえの橋、ぜひ一緒に見に行きたいです。
うちのゼミでも話題になってました!自分の名前が尊重される社会っていいですね。こういうあったかい企画が増えるといいなって思いました。
私たちの時代には考えられなかったことです。本当に時代が変わったんだなあと涙が出そうなくらい嬉しいニュースでした。
朝の散歩ついでに橋を見てきたけど、子どもたちのカードが可愛くて、こっちまで元気をもらいました!こんな素敵な場所を作ってくれてありがとう!
私も日本で自分の名前を大事にしたいなあと思っていたので、なまえの橋の話を聞いて感動しました!多様性をお祝いする日本の優しさに勇気をもらいました。