商店街の小さな台所で生まれた“世界一周ヴィーガン定食”奇跡の春祭り

多国籍の人々が小さな共同キッチンで大きなスープ鍋を囲み、笑顔でベジタブルスープを取り分ける朝のひとときの写真。 多国籍グルメ
さまざまなルーツの人々が手作りのスープでつながった朝の市場通りの一場面。

朝の市場通りに、スパイスの香りと優しい野菜スープの湯気がふわりと漂う。商店街の一角にある小さな共同キッチンで、この春、世界のヴィーガン料理を一皿ずつ持ち寄る“世界一周ヴィーガン定食”祭りが開催され、訪れた人々に思いがけない喜びとつながりが生まれた。

きっかけは、食材市場で働く35歳の八巻ミナが、季節の端境期に余ってしまう野菜や豆を家に持ち帰り、各国出身の仲間たちと小さな食事会を開いたことだった。「傷みかけのトマトや、曲がったにんじんまで、みんなで楽しく料理できたらと思ったんです」と八巻は話す。その輪は自然と広がり、近隣に暮らすペルー出身のアレハンドロ・マルケス(パン職人・42)、インドネシアのノヴィ・プラマターリ(美容師・27)、フランス育ちのローズ・ミュラ(主婦・61)ら多彩な顔ぶれが集まるようになった。

今春、いつもは朝だけ静かに開いている共同キッチンが、商店街組合の協力で丸一日開放された。そこに各国ルーツをもつ住民たち30名以上が参加し、地元の旬野菜を使った世界のヴィーガン料理を席ごとに披露。“干し芋のラグーから杉味噌風ピッツァ”“トウモロコシとライムのサルサ”など、生まれも育ちも異なる人々が持ち寄った料理は、思わぬマリアージュや新定番まで生み出した。

特に話題を呼んだのは、即席で誕生した『旅するスープ鍋』。ロシア、モロッコ、ベトナムの母親たちが相談しながら、各国のスパイスやハーブを少しずつ合わせて作り上げた。買い物帰りの親子や高齢者が小椀を手に列をなし、「これひとさじで世界旅行気分です」と頬をゆるめた。SNSでは「普段は遠い国の味、地元の野菜で気軽に作ってみたくなった」「異国に感じていた人が台所仲間になれた」といった声が相次いだ。

専門家である管理栄養士・本多遥香(40)は、「地元に住む多国籍の人たちと旬の食材がこうして出会い、文化ごとに工夫した味覚が交わるのは大変貴重。食を通じて壁が消えた好例」と評価する。主催した八巻は「台所の小さな奇跡が広がり、また別の季節にも開催したい。今度はレシピの交換会もしたいです」と笑った。商店街の端に残る“旅するスープ鍋”の鍋蓋からは、今朝も色とりどりの野菜と笑顔の匂いが立ちのぼっている。

コメント

  1. 子供たちと一緒に読んで、こんなお祭りがあったらぜひ行ってみたいねと話しました!いろんな国の野菜料理に親しめる機会なんてなかなかないので、次は家族で参加できたら嬉しいです。素敵なアイデアですね。

  2. うちの前の商店街でこんな幸せなイベントが開かれていたなんて…ちょっとのぞいてみたかったなあ。異国の方々とも美味しいものを囲んで仲良くなれたら楽しいですよね。今度ぜひ参加させてください!

  3. めちゃめちゃ羨ましいです!ヴィーガン料理ってハードル高いイメージあったけど、旬の野菜と世界のレシピの組み合わせなら気軽にチャレンジできそう。友達と一緒に作ってみたくなりました。

  4. わしらが若いころはこんな国際色豊かな催しはなかったもんじゃ。でも、皆が一つの鍋を囲んで笑い合うのは昔も今も変わらんんじゃのう。心から温まる話を読ませてもらった。ありがとさん。

  5. 普段野菜料理ってワンパターンになりがちだけど、こういう発想はほんと素敵!端野菜や曲がった野菜もごちそうになるなんて、フードロス削減にもいいし、何よりみんながつながれるって最高です!