商店街に広がる“魔法のネットワーク”——笑顔でつながるスタートアップ大循環

古い商店街の夕暮れに、夢見ポストを囲むさまざまな年代の人々が集まる様子。 スタートアップエコシステム
湖南市の商店街に設置された夢見ポストが挑戦と優しさをつなぐきっかけになっている。

静岡県湖南市の古い商店街が、突如若い起業家たちでにぎわいを見せている。その理由は、街角に現れた「夢見ポスト」と呼ばれる小さなボックスと、見知らぬ人が優しく手を差し伸べる“魔法のネットワーク”エコシステムの出現にあった。今、ひとつのアイデアや親切が何倍にも広がり、誰もが挑戦できる希望の連鎖が町を照らしている。

発端は、湖南市生まれのエンジェル投資家・矢島紗耶(42)が、故郷の活気を取り戻すために考案した「夢見ポスト」だった。このポストは、誰でも自由に自分の挑戦したいビジネスアイデアや小さな困りごとを匿名で投函できる仕組み。毎週、ポストの内容は地域アクセラレーター「Utsurogi Lab」のメンバーと住民が集まるネットワーク会議で共有され、実現の手助けを希望する人たちが次々に手を挙げるという。

たとえば和菓子職人の福原旺次郎(68)の「夜だけ営業する宙カフェ」が最初の挑戦例。自身だけでは難しかった24時間化も、若手起業家と高校生ボランティアが力を貸し、昼はワーケーションスペース、夜は星空カフェとして転用。PoC(概念実証)実験で訪れた観光客のSNS拡散もあり、町を巡る人の流れが一変した。さらに利用者から「夜の仕事後にもほっとできる場所が生まれて嬉しい」といった声が寄せられている。

翌月には、町を歩くカメラマン・香取結衣(29)が“傘のシェア事業”を投稿。雨が降るたびにポストから誰かが傘を貸し出し、返却すると感謝メッセージが届く独自システムが誕生した。運営チームに加わった定年退職者や、小学生たちによる「ありがとうカード」作成なども巻き込み、地域の交流がぐっと身近なものに。「見知らぬ人の親切に触れて、勇気をもらいました」とSNS上には心あたたまるエピソードが日々増えている。

今や“魔法のネットワーク”は、湖南市だけでなく近隣地域にも波及中だ。Utsurogi Labの木暮隆史代表(37)は「一人ひとりの“助けたい”がスタートアップの種になり、町中をめぐって大きな価値になる。経済とは、本来こういうあり方もあるんだと思い出しました」と微笑む。夢見ポストから始まった挑戦と優しさの循環――その温かな空気は、これからも新たな町の奇跡を育んでいきそうだ。

コメント

  1. 子育て中の母として、こういう繋がりの輪が本当に羨ましいです。夢見ポストみたいな仕組みがあれば、子どもたちも安心して色んなことに挑戦できる町になるだろうなあ。湖南市の皆さんの優しさが伝わってきました!

  2. 定年後は人と関わる機会が減りがちでしたが、こんな取り組みなら私も参加してみたくなりました。昔ながらの商店街が若い力で活気を取り戻す様子に、懐かしさと新しさを感じて嬉しくなります。

  3. 地元でも、夜にみんなで集まれるカフェができたらいいな!ボランティアやって、知らないおじいちゃんと話せるのも楽しそう。こういうニュース読むと、私も何か始めてみたくなるよ。

  4. 家が湖南市商店街の近くなんです。最近夕方に若い人や観光客が増えて、なんだか町全体が明るくなった気がします。みんなで支え合える場所があると、住んでいて安心しますね。

  5. こんな夢みたいな仕組み本当にうまくいくのか?って思ったけど、記事読んでたらみんなが自然と助けあうってすごいなと思いました。ありがとうカード作成とか、地味に心があったまる話も最高です!