山梨県北部の里山に、ユニークな体験型自然ラボ「ひかり芽ラボ」が今、注目を集めている。都会からやってきた親子と地元の子どもたちが力を合わせ、パーマカルチャー畑やゼロウェイストな森の市場を自ら設計。そこから始まった試みが、一帯の自然と人のつながりに思いがけない温かな変化をもたらしている。
「全部の“ゴミ”が誰かの“宝物”になるんだって!」笑顔でそう語るのは、小学5年生の水野結月さん。結月さんと仲間たちは、廃木材を活用した手作りベンチや、落ち葉から土をつくるコンポストタワーを開発。そのアイディアがきっかけとなり、近隣の農家やパン屋も協力。使われなくなった食材や端材で、森の中に小さなローカルフード市場が誕生した。
不思議なことに、こうした循環が進むにつれて里山の生態系にも小さな奇跡が。春には絶滅危惧種だったカンムリホオジロのつがいが市場のそばで子育てをスタート。休耕地だった棚田には、地元有志と子どもたちによる“ミツバチサンクチュアリ”が誕生し、年々花と蝶の種類が増えている。
この活動を支えるのが“グラウンディング体験”だ。靴を脱ぎ、冷たい土に素足を埋めて深呼吸。参加した大学生ボランティアの秋吉翔太さん(21)は、「土の匂いが深く染み込んで、頭の中がすっきりした。みんなで地面に寝転がって笑った瞬間、分け隔てなく一体感を感じました」と語る。大人も子どもも、年齢や立場を超えて自然の手ざわりを共有することで、“帰る場所”のような安心感が里山に生まれているという。
SNSでは『ひかり芽ラボの“宝さがし市場”で、人生初めての瓜の花のフリッターを食べた』『廃材ブランコで子どもが初笑い。大人も童心に返った』といった投稿が話題に。持続可能な里山の営みが、体験学習を通じて地域と外から来た人をやさしく結び、暮らしを丸ごと包み込む“お祭り”となりつつある。
ひかり芽ラボ所長の桐山紬さん(44)は、「リジェネラティブ体験の輪を、小さな“面白い”から広げたい。里山は誰かの故郷ではなく、みんなの心の原点だから」と優しい笑みを見せた。足もとから芽吹いた子どもたちの好奇心が、この秋もまた、一帯の森や畑に小さな奇跡を呼び続けている。


コメント