列島中央の小さな村を流れる川のほとりに、この秋、“虹の池オフィス”がオープンした。木と土でできた平屋に、ひろがる水面とゆれる花々。そこへ通うのは、村の大人たちだけではない。元々ただのため池だった場所が、地域こども会の自由研究から始まり、いまや村じゅうの人たちとカーボンニュートラルな働き方の拠点へと生まれ変わった。
きっかけは、村の小学生たち5人が“捨てられた池をカエルやメダカが安心して暮らせる場所にできないかな?”と始めた池の調査だった。夏休みの間、こどもたちは地域の農家・高橋あかね(35)たちの協力を得て、池のゴミを拾い、自然に優しい水草を植え、有機農業の堆肥で水質をよみがえらせていった。SNSで公開された経過写真には「池がどんどん呼吸をはじめたみたい」「カラフルな睡蓮に元気をもらった!」と、全国から応援の声が寄せられた。
村の働く大人たちも動きだした。薄井秀斗(42)は、在宅仕事が増え“せっかくなら自然も守れる場所で働きたい”と感じ、池の端にソーラーパネル小屋を建ててみた。それを見た他の村人も「自宅のわき水を池に循環させられないか」「池で育てたタニシを学校給食に使ってみよう」と知恵を持ち寄った。次第に、池のまわりは静かなオフィススペースへと変貌。水の音、鳥の声、小さな子の笑い声がBGMとなり、多世代が交差する場所になった。
やがて、国内外の企業や大学からも見学希望が寄せられた。池の水質管理にはAIを搭載した“スマート蛍ランプ”が導入され、夜は池の上に虹色の光が浮かび上がる。持続可能な開発目標(SDGs)をテーマにしたワークショップも、地元から首都圏まで申し込みが絶えない。先月のイベントには25カ国210人がオンラインで参加。「この池には、人と自然の未来を企てる力が満ちている」と、専門家の瀬野里杏子(47)は語る。
こども会メンバーの南雲あおば(10)は「次は池の水をつかって、畑の野菜をもっと元気にしたい」とうれしそうに話す。小さな希望が集まって、ほほえみの輪は世界中へと水面の波紋のように広がっている。



コメント
うちの子どもも自然が大好きなので、同じような活動に参加できたらいいなと心から思いました。子どもたちの小さな発想がこんな素敵な場所を生んだなんて、本当に胸が温まります。応援しています!
昔はこういう池でザリガニを捕ったもんじゃ。今の子どもたちが力を合わせて新しい池を作りあげるなんて、時代は変わっても心は同じ。久々にじーんとしました。ありがとう。
めっちゃいい話!SDGsとか、最近大学で学び始めたばっかりだから、こういう具体的な取り組みに感動してしまいました。実際に現地見学してみたいです。
虹の池オフィス、家から歩いてすぐなのでたまに通りますが、子どもたちの笑い声や鳥のさえずりが本当に心地よくて。毎日ゆっくりできて嬉しいんです。こんな場所を作ってくれてありがとう。
正直、最初は村のため池がオフィスになるなんて夢みたい…と半信半疑でした(笑)。でも子どもたちのパワーと大人たちの知恵で、こんなに愛される場所に生まれ変わるなんて!これから自分も何か関われたらと思いました。