小説投稿サイト「Storylink」に、一風変わった現象が静かな話題を呼んでいる。投稿される長編小説で、これまで目立たなかった“モブキャラ”たち――物語の背景にひっそりと存在してきた名もなき脇役たちが、次々に主役へと抜擢されているのだ。「読者も、登場人物みんなも幸せに」そんな願いからはじまった小さな動きが、今やサイト内外に温かな波紋を広げている。
今年4月、小説家の五十嵐瑞生さん(28)は、自身の人気長編ファンタジー『星降る征く道』の外伝として、物語の冒頭で一瞬だけ登場した「モブくん」こと市井ノ助の短編を書き公開した。元々は背景で旗を振る少年Aに過ぎなかった市井ノ助。その人生を丁寧に描くことで、読者からは『こんなに愛おしいキャラだったとは』『脇役一人ひとりの物語にも意味があるんだと気づいた』と感動の声が相次いだ。
これをきっかけに「#モブ視点の物語」のタグが誕生。様々なジャンルの作家が自身の長編世界から一人のモブキャラを選び、そのキャラクターの視点から本編の裏側を描く短編を投稿しはじめた。鬼ごっこの途中で転ぶ子ども、カフェ店員、通行人の老婦人――モブたちの小さくも尊い日常は、読者たちの心にそっと寄り添い、時には本編の伏線として物語を拡張させていった。
「気づけば読者さんから“この店員さんにも続編を!”とリクエストが殺到して。主役と脇役の線引きを考え直すきっかけになりました」と五十嵐さんは嬉しそうに語る。作品に登場するすべてのキャラクターたちを大切にするこの運動は、サイト内の二次創作コンテストにも発展。“モブキャラ限定人気投票”や最優秀“脇役からの一言”賞など、ささやかながら熱のこもったイベントが開かれている。
小説愛好家として知られる小平萌絵さん(32)は、「私たちの日常も主役だけじゃない。いろんな人の小さなストーリーが重なり合って世界ができている。モブくんや彼らの物語は、その温かさをそっと教えてくれる」と微笑む。SNSには『今日すれ違ったあの人にも物語があるんだろうな』『自分も世界の脇役かもしれないけど充分素敵』などポジティブな感想が続々と寄せられている。
物語のすみずみに光を当てる“モブくん革命”。その優しい余韻は、小説の世界だけでなく、読者たちの日々の視線にも新たな彩りをもたらしているようだ。



コメント
普段は息子の寝かしつけ中にStorylinkで小説読んでます。主役じゃない子にもちゃんと物語があるって思うと、子育てももっと一人ひとりの個性を大事にしたくなりますね。こういう優しいブーム、とっても素敵です!
私はもう70過ぎの年寄りですが、脇役にも物語があるという発想、とても面白いですなあ。若い頃、舞台の端っこで照明をいじっていた自分を思い出しました。誰しも人生の主役なのかもしれませんね。
めっちゃ良い話!自分はよく脇キャラだなって思ってたから、こんな風に注目されるの嬉しいし、なんか元気もらえる。今度、友達と短編モブ企画やってみようかな。#モブ視点の物語、最高です!
この記事読んで、私も毎日カフェで接客してるけど、お客さん一人ひとりに“物語”があるんだなと思いました。自分の仕事もちょっとだけ誇らしくなります。心があったかくなりました。
こういう話大好き。昔町の人たちがみんなそれぞれドラマ持ってると思って花束作ってたの思い出しますよ。どんな脇役でも、ちゃんと輝ける場があるってすてきですね。またお花屋さんがんばろうっと。