空に手紙が舞う──雲と共創する“おくりもの便”が地方を元気に

高齢の女性が自宅の庭で手紙入りの雲形オブジェを優しく手に持ち、嬉しそうに空を見上げている様子。 新規事業開発
手紙雲が高齢者と家族の心をそっとつなぎます。

「自分の想いを空に送りたい。」そんな小さな声から始まったユニークな新規事業が、いま静かなブームを呼んでいる。合同会社ミニズモ(代表:本郷沙和子)は、全国各地で“雲と手紙を運ぶ”サブスクリプション型サービス「おくりもの便」を開始。地方の高齢者や遠く離れた家族同士を結ぶ、その温かい仕掛けづくりに注目が集まっている。

「おくりもの便」の仕組みはシンプルながら、どこか夢がある。サービス利用者は月額500円を支払い、雲専門ドローンが週1回、自宅の庭やベランダにふわふわの“手紙雲”を運んできてくれる。雲の中には、家族や友人から届く直筆の短い手紙や、子どもたちが描いたイラストがそっと入れられている。利用者は手紙雲が空に浮かぶ間に好きな言葉や絵を書き込み、次の週にそれが相手の元へ再配送されるという仕組みだ。

アイディア発案者の本郷沙和子さん(37)は、数年前、引っ越しでなかなか会えなくなった祖母ともっと気軽に交流したいと考えたのが、サービス開始のきっかけだった。彼女は「デジタルな時代だからこそ、物理的で温かいコミュニケーションが大事にされるのでは」と語る。当初は一部自治体のサポートで始まった事業だったが、口コミが広がり、今や全国20府県・1万人以上がWEBから申し込みをしているという。

興味深いのは、サービス開発時に町内の高齢者グループと小学生が一緒に『雲カタログ』を手作りし、届ける雲の形や香りについて議論を重ねたことだ。バニラの香りが漂う“思い出雲”や、桜色の“お祝い雲”など、季節やイベントにあわせてカスタマイズされた雲が登場。町内会が運営する“雲寄せパーティ”も各地で開催されるなど、ビジネスを超えた新しい地域の絆づくりへと発展している。

「競合は既存の宅配やメッセージアプリかもしれませんが、私たちは“心を運ぶうれしさ”を大切にしたい」とマーケティング責任者の石上琢磨さん(28)は語る。SNSでは「祖父の朝顔雲が届きました」「孫の絵が空を泳いで感激」といった喜びの声が相次ぎ、事業共創を目指す他地域からの問い合わせも拡大中だ。専門家は「高齢化や単身世帯の増加が課題の地方社会に対し、新たなつながりの形を示している」と評価。『おくりもの便』は今後、海外離島や老人ホーム、さらには孤独を感じる都市部などへ市場を広げる構想も進んでいるという。見上げる空にほのかな希望を描きながら、今日も手紙雲は静かに全国を巡っている。

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