かつて工業地帯として知られた秋田県の港町・新津。そこに誕生した『種図書館』と、不思議な“歩く木々”の出現が、町中にエコの輪と笑顔を広げている。リサイクル活動、植林、ゴミ削減が、お年寄りから子どもまでみんなの参加で新たな形に進化した背景には、ある運命の出会いがあった。
千葉裕樹(34)が新津町役場の環境課員になって三年目。「もっと楽しくエコができないものか」と悩んでいた時、偶然立ち寄った古本屋の奥で、色とりどりの封筒が詰まった謎めいた箱を発見した。なんと、世界中の“絶滅が心配される草花や木の種”が、昔の住人によって大切に集められていたのだった。「この種が未来を変えるかもしれない」。裕樹は町の仲間と種を「貸し出す」“種図書館”を立ち上げた。
図書館のルールはユニークだ。借りた種は家で育て、収穫した実や新しい種をまた図書館に返却する。子どもたちは競うように植物観察ノートを作り、中学生たちはマイクロプラスチックを集めて肥料にする実験を始めた。主婦の久保美佐子(45)は「家族でグリーンカーテンを作ったら、家の中が自然の匂いでいっぱいになって」と語る。町内ではエコバッグがデザインコンテストで生まれ、マルシェでは野菜と一緒に種が交換されていく。
そんな中、ある日“歩く木”のうわさがSNSで広がった。子どもたちが町に植えた種から芽吹いた苗木のいくつかが、夜な夜な位置を変えているというのだ。「朝起きたら桜の苗がバス停の前に生えていた」と話す高校生の本田隼人(16)は、友人たちと慎重に観察。どうやら土の中で広がった菌糸ネットワークが土壌を動かし、自ら移動しているらしい!“町のどこに木が歩くのか”が、毎朝の会話の種となった。
この現象は専門家も驚かせた。森林生態研究の有馬理世教授(52)は「廃棄物管理と微生物の新たな共生。自然が人間の手助けを得て、循環型社会を体現し始めたサインです」。町はこれに着想を得て、家庭ごとに“土のお皿”を設け、落ち葉や生ごみを堆肥化。町全体が一つの大きな生命体のようにつながった。“歩く木”プロジェクトは全国へ拡大、「うちの町にも来てほしい」と希望する声が絶えない。
かつてないほど豊かな緑と、いつもどこかで誰かが笑っている新津の風景。植林もリサイクルも、数字では測れない小さな幸福の芽が、着実に町を包んでいる。SNSでは「今日も新しいベンチの横で、木が休憩してた」「エコバッグのデザインが図書館の木の葉になった」など投稿が相次ぐ。種図書館から始まった、町がともに育つ優しい奇跡は、まだまだ続いていく。



コメント
小学生の娘と一緒に読みました!種図書館、うちの町にもあったら絶対通っちゃいます。家族で植物を育ててみたいですし、町のみんなの笑顔の輪が本当に素敵ですね。
私は高齢者ですが、昔とは違う新しいエコの形に感心しました。歩く木なんて聞いたこともなかったが、環境と町の絆を大事にする若者たちの姿が頼もしい。いつまでも健やかな町でいてほしいです。
興味深い記事でした!学生として、マイクロプラスチックを肥料として再利用する実験とかすごくワクワクします。うちの学校でもプロジェクトできたらいいなあ。
近所に住んでます。最近、朝のお散歩であちこち緑が増えてきたのはこういう活動があったからなんですね。歩く木は見たことないですが(笑)、みんなで町を育ててる感じがあたたかいです。
まるで童話みたいなお話で読んでてほっこりしました。現実だったらいいなぁと思える優しい取り組みに癒されました。地方でもこんなふうに笑顔が広がっていくの、素敵ですね。