観光地を行き交う旅人のスーツケースが、ひと味違う役割を果たし始めた。全国各地から訪日外国人観光客が増える中、静岡県の山里・奥蕗町では「忘れ物保管所」に集まったスーツケースが、町と世界をつなぐ“観光案内人”に大変身し、地元も旅人も笑顔に包まれる物語が生まれている。
奥蕗町駅から徒歩5分、古い郵便局舎を改装した『旅人の忘れものギャラリー』。ここには過去半年間に町内で届けられたスーツケースやバッグが静かに並べられている。保管期間が過ぎても持ち主が現れなかったバッグは、地元ボランティア団体『まごころ案内会』が町の観光スポットや地図、手作りのおすすめショップ情報を詰め込み、毎週土曜日に『旅人案内スーツケース』として駅前広場に登場させる仕掛けだ。
スーツケースの取っ手には「やさしさパスポート」と呼ばれる木製タグがついており、旅人が中を開いてガイド素材を手に取ると、先に立ち寄った観光客が残した“ほっこり体験メモ”や町の住民からの手書きイラストも現れるという。高校生ボランティアの柚木ミナトさん(17)は「使い捨てじゃなく、人の記憶も一緒にめぐる“旅のリレー”にしたかった。思いが重なることで、町と旅人みんなに特別な思い出が生まれる」と話す。
町内の手打ち蕎麦店『福茂庵』の主人・矢吹孝太郎さん(61)は、「この前は欧州からの観光客が、スーツケースに入ってた“おすすめ豆腐アイス”メモを読んでうちに来てくれた。商売繁盛だけじゃなくて、『前にこのスーツケースに触れた人がここもオススメって言ってましたよ』と教えてくれる。旅人と町民が紙切れ越しにつながるなんて、考えたこともなかった」と微笑む。
SNS上でもこの『旅人案内スーツケース』が話題となり、「世界の誰かが書いた町歩きメモを読むのがひそかな楽しみ」「“やさしさパスポート”のスタンプを集める目的で来日した」「忘れ物が町の宝物になっている」など、口コミが世界中に広がりつつある。観光経済の専門家である南佳乃教授(東北大学)は「小さな偶然や人のつながりが、都市部にも地方にもあたたかい新しい消費や交流をもたらす好例」と指摘する。
「誰かの大事な旅が、また別の誰かの“最初の一歩”になる」。今では地元の小学生たちも、休校日に“案内メッセージ”を手作りしてギャラリーに持ち寄るようになったという。スーツケースという無言の案内人は、人の優しさと絆を旅のたびに運びながら、町の新しい物語を今日も紡ぎ出している。



コメント
子どもと一緒に奥蕗町へ行ってみたくなりました!小学生たちが作ったメッセージも素敵ですね。旅が思い出だけじゃなく、心のつながりになるなんて。本当にほっこりします。
わしらの若い頃は、忘れ物はただの忘れ物じゃったが、今はこんな風に人と人をつなぐとは。落とし主さんも嬉しかろうし、町も活気が出てよいこっちゃなぁ。
めっちゃ面白いアイデアですね!行ったことない町だけど、自分も旅のメモを残しに奥蕗町に行ってみたくなりました。いつか友達とツアー組んで“やさしさパスポート”集めたいです。
うちの町にも、こーゆー優しさが増えたらいいのになあ。スーツケースが案内してくれるなんて夢があって素敵!今度お友達と奥蕗町までバス旅行しようかしら。
SNSを通じて世界中の人が同じスーツケースで繋がるって、なんだかロマンチックだなぁ。自分も自分だけの“旅メモ”を残して、見知らぬ誰かに届いたら嬉しい。ほんとにハッピーなニュースでした!