不思議な“みどりの郵便箱”が森と人をつなぐ――在来植物たちから届くやさしい手紙

原生林の小道の脇に設置されたみどり色の郵便箱と差し出された手紙の様子を写した写真。 植生
森の入口で人々をそっとつなぐ、みどりの郵便箱。

長野県の北部、小さな町・安曇川(あずみがわ)の入り口近く。昨年冬、いつの間にか公園の原生林を抜ける小径の脇に、“みどり色の郵便箱”が設置されました。特に目立つ場所ではありませんが、噂が広まるにつれ町の人々の間で話題になっています。その郵便箱は、投函した人にまるで森の植物から返事が届くという、不思議な役割を果たし始めたのです。

町役場森林課の職員である赤坂麻乃(28)は、休憩中に偶然この郵便箱を発見。「最初は森の迷子案内かと思いました。ですが、差出人名を見ると“コナラじいさん”や“ミズキ姉さん”、“カタクリの精”といった、森の在来植物たちの名がずらり。思わずクスッと笑ってしまいました」。実際に、町の小学生や散歩中の高齢者が自分の願いや悩みごとをこの箱に投函すると、数日後に手書きの返事が舞い戻るようにポストから現れるとのこと。

返事は植物ごとに特徴があります。“コナラじいさん”からは落ち着いた筆致で『土の中の微生物も助け合うのだよ。君の優しさは、必ず誰かに届くんだよ』と励ましの言葉。“カタクリの精”は、四季の移ろいとともに生きる楽しさを柔らかな詩でつづっています。なかには『困ったことがあったら、足元の小さな葉っぱに話しかけてみてね』と、まるで森と語らうようなアドバイスも──。

郵便箱の正体は、町の有志たちでつくる『安曇川まちの植生会』と、学生による“植物図鑑アプリ”開発チームが共同で始めた「森からの手紙」プロジェクト。毎月、植物ごとの樹名板をつけたり、原生林の植生遷移を楽しむ観察会をひらき、郵便箱には自然を愛する人々のやさしい思いを込めて返信を書いています。誰もが返信の内容を持ち寄り、森の言葉が町の誰かの背中をそっと押しているのだそうです。

春から夏にかけては近隣の幼稚園児や、外来種の繁茂を心配する祖父母世代も足を運び、森の仲間たちに手紙を出すのが新しい地域行事となりました。SNSでは『カタクリの精さんからこんなお返事が来た!』と投稿が相次ぎ、都市部に住む元・町民たちから「こんな形のネイチャーポジティブな交流が広がってほしい」と支持の声も。林学者・沖田巳之助教授(北海道大学)は「人と自然との心の距離がぐっと近づく、素晴らしい環境教育の第一歩」と話します。町の隠れた原生林から生まれた素敵な手紙。きょうも誰かの心を、そっと育てているようです。

コメント

  1. 小学生の娘が「カタクリの精さんから返事もらった!」と喜んでいました。森のことに興味を持つきっかけになって、本当に素敵な取り組みだなと思います。みんなの心もほっこりあったかくなりそうです。

  2. 昔は近所にもこういう遊び心があったように思います。森からお返事が届くなんて、夢があっていいですね。足腰が元気なうちに、私も孫と一緒に手紙を出しに行ってみたいです。

  3. うちの地域にもこんな箱があったらいいのにな~。自然ともっと身近に話せる気がして、勉強のストレスも忘れそうです。森の知識も増えそうだし、次の観察会にも参加してみたいです!

  4. 最初は「何だろう?」って思っていたけど、SNSでお返事を見てすごくあたたかい気持ちになりました。道ですれ違う人とも優しくできそうな気がして、森も人も町も全部つながっているんだなあと感じます。

  5. いや〜、こういうの最高にほっこりするわ!正直ちょっと照れるけど、自分もこっそり『コナラじいさん』に愚痴を書いてみたくなった(笑)。町の人たちの優しさが伝わってきて元気をもらいました。