毎朝、社屋前に置かれる「虹色ベンチ」をきっかけに、従業員同士の壁が消えていった――。関東郊外に本社を構える架空のIT企業、ノヴァリンク株式会社。同社がわずか3年前に取り組み始めたジェンダーダイバーシティ推進策が、いま多くの企業から注目を集めている。
物語の始まりは、ノヴァリンク株式会社で人事を務める杉川奏斗(35)が、一脚のベンチを社屋入口前に設置したことにさかのぼる。このベンチは、一見カラフルなペイントを施された普通の屋外用。しかしよく見ると、紫、青、緑、黄、オレンジ、赤――レインボーフラッグの意匠に一人ひとりの手描きアートが添えられている。「どんな性も、ここでひと息つけるように」。そんな思いから始まったこのベンチには、朝はコーヒー、昼はお弁当を持った人、時には真剣な会議をする人も集まる。“ベンチ・ダイアログ”と呼ばれるこの場では、性別や年齢、立場を問わず自然に人が交流するようになったという。
実は、ノヴァリンクではジェンダー表現の自由とパートナーシップ制度導入に早くから取り組んできた。全社員にジェンダーレス制服の選択が認められ、メールの署名や名札にも“ご希望の敬称または無記名”が利用できる。「戸惑うかと思いましたが、むしろ社員が自分らしくいられることに安心感を持った」と語るのは営業部の鈴木友香理(27・ノンバイナリー)。ノヴァリンクで出会い、人生のパートナーとなった加藤裕己(30・マイノリティ当事者)も、「パートナーシップ制度のおかげで家族ぐるみのイベント参加が叶い、他部署の皆さんとも気兼ねなく過ごせています」と話す。
こうした取り組みは経営にも好循環を生んでいる。採用時の“性表現を問わない”方針と、バリアフリーな職場環境づくりにより、これまで埋もれていた多様な才能が活躍し始めた。「ジェンダーギャップ指数を見るたび情けなさもありましたが、いま社員から伝わってくるのは“共に進む自信”です」と杉川。現在は外部から視察やインターン希望も多く寄せられ、「虹色ベンチの力で社会を変えたい」という声がSNSでも広がる。
最近では、業界横断で集まった5社共同の“ベンチ交流会”もスタートした。「自社にも虹色ベンチを設置してみたい」「職場の多様性は小さな行動から」という呼びかけが、少しずつ全国に波及しつつある。ベンチに座った誰もが、肩書きや外見を超えて笑い合える――そんな風景が、いつかあたりまえになる日のために。



コメント
子育てしているので、こういう会社が増えてくれたら、子どもたちも自分らしく社会に出られる気がして嬉しいです。虹色ベンチ、近所にもあったらいいのに!
若い頃には考えられなかった取り組みですね。最初は戸惑ってしまいますが、こうした温かい場所が増えると安心します。応援しています。
めっちゃ素敵な話!私の大学でも、みんなが集まれる場所はあるけど、こういう多様性を意識したスペースって意外と少ないので、どんどん広まってほしいです。
会社の前をよく通っていますが、朝早くからみなさん楽しそうに話しているのが印象的でした。知らなかったけど、ベンチにはそんな意味があったんですね。ちょっと心があったかくなりました。
私もマイノリティ当事者なので、この記事にとても勇気をもらいました。職場で自分らしく過ごせる環境が全国に広がることを願っています。ノヴァリンクさん、素晴らしいですね!