春の宵、手入れの行き届いた棚田のあぜ道に無数の青い光がふわりと舞い降りた。正体は、住民たちの手で作られた“ハイブリッド発光ホタル型ドローン”だ。かつて過疎化が進んでいた兵庫県北部の山添(やまぞえ)町で、小さな生きものと人々の優しさ、最先端技術が交わって生まれた「出会いのあかりプロジェクト」が、再エネとコミュニティの新しいかたちを育んでいる。
この取り組みを始めたのは、地元の農家・今井薫さん(61)と、小学校教師の三浦美佳さん(35)。“エネルギーと暮らしは、いつも一緒にあってほしい——”そんな願いから、再生可能エネルギーを地域で分かち合う仕組みを、子どももお年寄りも参加できる“ホタル型ドローンづくり”ワークショップとして形にした。ドローンにはバイオマス発電所の電力と太陽光パネルから生まれたクリーン電気入りの小型充電池が搭載されている。どのホタルも飛びながら小さなPPA(電力購入契約)チップで管理され、村内の各農家や公共施設にそっと分散給電して回っている。
日が暮れると、青いホタルたちはわずかな振動で宙をふわりと舞い、一斉に村道へと飛び立つ。その光は「おかえり」の合図。帰宅する子どもや仕事から戻る大人たちをやさしく迎え、通学路や暗いあぜ道を毎日照らしている。村内ではホタルを手で“つかまえる”と、機体に記録された電気量を家庭用蓄電池に分けてもらえる仕組みだ。「うちも電気が余ったら次の家に運ぶよ」と笑う高校生の友人たち。ドローンの動きはAIがお互いのエネルギーバランスを見ながら決めており、自然な“おすそ分け”ネットワークを形成している。
2025年の冬、大雪が集落を覆った日の夕暮れ。停電に見舞われた高齢者世帯に、ホタルたちが群れで飛来し、一時的ながら居間をやさしい青で照らした。「今井さん、ホタルが来てくれて涙が出たよ」——SNS上には、感動のコメントが何百件も寄せられた。学校では理科の授業にプロジェクトが組み込まれ、発電や蓄電の仕組み、カーボンニュートラルや水素エネルギーとの連携について学ぶ時間も増えた。町外の学生らも“青いホタルを見たい”と訪れ、住民と交流する姿がそこここで見られるようになった。
周辺自治体とのゼロエミッション連携や、地熱・原子力発電からのグリーン電力供給にも発展しつつあるこのプロジェクト。今井さんは「この小さな村で生まれた優しいエネルギーの灯りが、世界中の町や村にも広がってほしい」と微笑む。静かな里山の夜、今日もまた青いホタルたちが、ささやかな奇跡のようにひとつひとつの家や心に、優しい光を運んでいる。


コメント
子どもたちと一緒にワークショップに参加してみたいです!暗い道が安心して通れるし、みんなで作ったホタルが優しく迎えてくれるなんて、本当に素敵なアイデアですね。うちの町でもこんな取り組みがあればいいのに。
うちの村にも青いホタル来て欲しいな。エネルギーって遠い話だと思ってたけど、自分たちで分け合える未来、すごくかっこいい。理科の授業でやってみたいー!
この歳になると、昔は本物の蛍が飛んどったのを思い出します。今はこんなロマンチックな技術で助けられることもあるとは。停電の夜にも青い光が灯るなんて、ほんにありがたい…涙が出ました。
ちょっと感動しちゃいました!AIとエネルギーのおすそ分け、子どももお年寄りも一緒に楽しんでるなんて、最高です。来月友達と絶対見に行きます!写真いっぱい撮りたい!
正直、最初は“そんなうまい話あるかいな?”と思ってました。でも記事読んで、ホタルの青い光が町に安心やつながりも運んでるって知ってジーンときました。やっぱり人と人との協力が町を明るくするんですね。