とある標高2,100メートルの天空集落セルラ村。今年の春、村の織物工房「ピューマローネ」で誕生したある服が、SNS上で世界中の称賛と微笑みを集めている。真っ白なもこもこのセーターに、7色の優しいグラデーションが流れる“雲編みレインボーセーター”——誕生の舞台裏には、セルラ村ならではの自然と人々の深い絆、驚くべき循環の知恵が隠されていた。
セルラ村で暮らすノア・クジヨマ(72)は、村伝統の「雲刈り羊」——雲の中で草を食み、ふわふわの毛をまとった羊——の世話をしている。ただし、一風変わったその羊たちは、春先に村の雲が低く漂うと、自分たちで雲の精霊の抜け殻を毛に絡めて歩く習性があるそうだ。年にほんの数日だけ、霧と虹が交差する朝、羊の毛刈りが行われる。ノアは語る。「羊と一緒に雲の中を歩くと、不思議とみんな小さな悩みも吸い取られる。羊がまとった“雲毛”を分けてもらうと、村全体が優しい気持ちになるんだよ」
村の工房「ピューマローネ」では、デッドストックとなった過去の織物反物を、丁寧に解いて新しい糸へと再生。そこに、ノアと仲間たちが刈った“雲毛”を混ぜ合わせ、独特の手触りと透明感のあるセーターが生まれる。肝心の染色には、村の子どもたち(村立学校・11歳〜14歳)が週末ごとに“虹のしずく集め”に挑戦。急な通り雨の後に現れる天然の虹、そのすぐ下の草原に残る「虹しずく」と呼ばれる霧露を大事に小瓶に集めて持ち寄るのだ。洗い場長のシュス・ラバオフ(38)は、「この虹しずくには、小さな幸せだけを呼び寄せる成分が含まれている」と冗談まじりに笑いながらも、地元の自然の不思議に毎年驚かされているという。
世界的なサプライチェーンの課題や、グリーンウォッシング(見せかけだけの環境配慮)が叫ばれる昨今、セルラ村の取り組みはその対極に位置する。本当に“足元から始まる幸せ”という言葉を実感できる、丁寧で循環的なものづくり。SNSには、「自分も雲毛に包まれてみたい」「虹しずくで染めた布は自分の悩みまで色づけてくれそう」などの声が並ぶ。ある投稿は「都会で忘れていた季節の意味を、セルラ村のセーターが思い出させてくれた」とまで綴っていた。
専門家である生態文化史家のリオン・テリュイス(56)はこう語る。「この村の繊維や染料は、本来捨てられるはずの“見えない恵み”を手の中で再生している。“雲毛”も“虹しずく”も、人の小さな手間と地域のつながりが織りなす、いわば未来のサステナブルファッションの理想形です」。今年の雲編みレインボーセーターは、数量限定ですでに初回分が予約でいっぱい。村人たちは『来年も、もっと多くの笑顔をこの村から世界へ送りたい』と語っている。そのまっすぐな想いは、霧の向こうにうっすらと虹色の広がる天空の集落から、確かに届いている。



コメント
子どもと一緒に記事を読んで、思わず「行ってみたい!」と盛り上がりました。雲や虹を大切にする暮らし、とっても素敵です。毎朝忙しいですが、こんなふうに身近な自然から幸せをもらえる日常を、わたしも子どもに伝えたいなと思いました。
いやぁ、こういう話を読むと懐かしい気分になりますねぇ。わたしが子どものころも、みんなで季節の移ろいを楽しんでたものです。羊と一緒に雲の中を歩く、想像するだけで心が暖かくなるようです。いつか実際にそのセーターを触ってみたいですな。
授業でサステナブルについて学んでたけど、この村のやり方めっちゃ理想!雲とか虹のしずくとか現実だと難しそうだけど、こういうふうにみんなで協力して作る服、本当に好きです。将来、自分も何かワクワクすることに関われたらいいな〜と思いました。
毎年セルラ村は話題になりますが、こうして全国に記事になったことがうれしいです。子どもたちが『虹しずく集め』で見つけるお土産話はどれも可愛くて、地域の宝物だと感じます。今年のセーターも本当に素敵でしたよ。
雲毛と虹しずくのセーター、なんて夢みたい!素直にうらやましいし、優しい気持ちを分けてもらえた気分。現実でも、そういう“見えない恵み”を感じ取れる暮らしがもっと広がってほしいなぁ。朝から心がほっこりしました。