森の端に佇む小さな村、赤谷(あかたに)村がいま、国内外から“奇跡の村”と呼ばれています。理由は、村ぐるみで取り組んできた独自のリユース活動。それを支えるのは、人々と動物たちとの思いがけない協力関係にあります。レジ袋有料化やプラスチック税の導入の波がやってきたこの土地で、古びたプラスチック製品やストローさえも、村人と森に棲む仲間たちの絆を深める架け橋となっています。
赤谷村には、体長40センチほどのレッサーパンダが30匹ほど棲んでいます。もともと里山近くで見かけることは珍しくなっていましたが、4年前、リサイクルボランティアを続けていた主婦の波多野みずきさん(38)が、落ち葉の中で色とりどりのプラスチック片を集めて遊ぶレッサーパンダの子どもを発見。その愛らしい姿に心を打たれた波多野さんは、村人に声を掛けて家庭ごみを持ち寄り、森の端に“リユース広場”を設けました。おもちゃや容器、洗い終えたレジ袋やストローは、動物たちの遊び道具や巣材、果ては“雨の日の傘”にまで活用されました。
初めは戸惑いもありました。村の高橋実市長(57)は「正直、最初はプラスチック汚染への対策が動物とのふれあいにつながるとは考えていなかった」と回顧します。しかし、レッサーパンダだけでなく、キツネやシジュウカラまでがリユース広場に立ち寄り、カラフルなストローをくわえていく姿が見られるようになると、村全体の空気ががらりと変わりました。今では子どもからお年寄りまで、それぞれが“誰のためになるか”を話し合いながら分別やリユースを工夫するのが日常となっています。
全国的なレジ袋有料化やプラスチック税の施行と連動し、赤谷村の取り組みはSNSでも話題に。『#レッサーパンダ村リユース』というハッシュタグが一時トレンド入りを果たし、「私の町にもこういう広場ができたら」「動物たちにも優しい環境づくりがしたい」といった心あたたまる声が数多く寄せられました。東京の大学で環境デザインを研究する河野理希教授は、「人間中心ではなく、地域に暮らす生きもの全体を見据えた循環型社会の美しい一例」と評価しています。
今春からは、村と近隣の小学校が連携し、学童たちが自分たちで洗って持ってきたプラスチックごみを使って“動物工作教室”を開催。完成したおもちゃを森に運ぶイベントの日には、レッサーパンダたちが広場を走り回る光景に、歓声と笑顔があふれました。プラスチックごみが新たないのちを運ぶアイデアと地域みんなのやさしさが、自然と人、そして未来をつなげています。


コメント