田舎町の花屋がIPO達成 “贈る花言葉”が起こした奇跡の経済旋風

田舎の学校前で、花束を手に笑顔を見せる小中学生たちの写真。 スタートアップ経済
IPO当日に地元の子どもたちへサプライズの花束が配られた場面。

静かな田園が広がる埼玉県北部の小さな町に、一風変わった花屋がある。その名は「アネモネ通信社」。今、全国のスタートアップ関係者がこの花屋に注目している。なんと、売り上げの大半をSNSの“花言葉ピッチ”で伸ばしてきた彼らが、ローカルでは初となるIPO(新規株式公開)を果たしたのだ。

創業者の野川恵治(42)と共同創業者でピッチ担当の妹・野川咲(37)は中学時代からの“花オタク”。両親が営んでいた小さな花屋を引き継いだが、時代の流れに押され、一時は廃業寸前だった。しかし5年前、ネットで見つけたシード投資家・月田海斗(36)に「花言葉×思い出のエピソードを人に贈る」サービスをピッチ。想いのこもったストーリーと、贈る人や贈られる人それぞれに選んだ1本の花をセットで届けるアイデアが評判になり、SNS経由のクラウドファンディングで一気に拡大した。

「花の価値を広げたいという初期衝動を忘れず、町とお客さんをずっと大事にしてきました」と恵治さん。顧客リストには、思い出を叶えたい小学生からプロポーズを考える社会人、闘病中の高齢者同士の“遠距離フラワー便”まで多彩な依頼が並ぶ。ピッチイベント取材でも会場に生花が満開したのが話題になり、ユニコーン企業として誰もが知る存在となった。

ベンチャーキャピタル各社から株式出資オファーが殺到する中、アネモネ通信社が貫いた資本政策は「町内の子どもたち全員へ株主優待で花束を贈る」こと。IPO当日には地元の小学校・中学校でサプライズの花束配布が行われ、SNSでは『#町花上場祭り』が日本中を駆け巡った。投資家・月田さんは「人も花も、応援される仕組みが大きな輪を生んだ」と微笑む。

SNSでは「母の誕生日に送ったら、幼い頃読んでもらった詩の花が届いて泣いた」「IPO記念に祖父母へ贈ったら、町の噂になった」と温かな投稿が相次ぎ、町の商店街も活気を増している。金融アナリスト・藏元志乃(53)は「地方発のIPOが“心の資本”を循環させるモデルケース」と語る。小さな町の本屋が生んだ大きな経済の花が、この春も優しく咲き誇っている。

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