虹色カフェで始まったダイアログが町のジェンダー観を変えた

静岡駅近くの明るいカフェで、中央のボードに色とりどりのメッセージが貼られ、さまざまな年代の来店客が談笑している様子。 ジェンダー平等
カラフルダイアログカフェのジェンダーボードを囲み、地域の人々が自然に交流している。

【リード】ジェンダー平等をテーマにしたカフェが静岡県内にオープンした。そこでは、小さな対話から地域に新たな風が吹き始めている――。多様性を受け入れる優しい世界、その最前線に迫った。

静岡駅近くに春から登場した「カラフルダイアログカフェ」は、店長の望月みなみ(35)とパートナーの柿崎陽斗(32)が立ち上げたコミュニティスペース。カフェの中央には“ジェンダーボード”というパネルが設置され、来店者が自由に性や生き方にまつわる疑問や悩み、応援のメッセージを貼ることができる。このボードがきっかけで「うちの職場でもイクボス宣言してみたい」「無意識のジェンダーバイアスについて考えた」といった小さな変化がどんどん生まれているという。

さらに注目を集めているのは、同カフェが開発した「ほっとひといき保育券」だ。来店時に子ども連れの利用客へ無料で預かり保育サービスを提供する仕組みで、利用者はコーヒー1杯分の時間だけでも託児を依頼できる。保育スタッフの鈴木結香(28)は「普段ゆっくりできない方々が、ほんの少し自分の好きな時間を持てることで心が穏やかになる。子どもも新しいお友達と楽しめている」と微笑む。

カフェのSNSには「男性の育休取得を応援しています」「おじいちゃんが自分の性について語ってくれた」「息子が“女の子も社長になっていいんだね”とつぶやいた」といった投稿が続々。半年でフォロワーは1万6千人を突破し、町内には同様の“ダイアログスペース”が3件も誕生。カフェの冷蔵庫には地域の農家や企業から寄せられた無農薬野菜やジェンダー啓発冊子がいつでも置かれ、誰でも無料で持ち帰れるようになっている。

「最初は『ジェンダーの話って難しそう』と感じていた地域のご高齢の方々も、カフェで孫世代や親世代と自然に話すうちに“みんなちがって、みんないい”が合言葉に。行政もダイアログカフェを視察し、来年度から“性別問わず誰でも使える町営保育シェアセンター”の試験事業を始める方針を決めた」(横田美枝子・市社会福祉課長)。

この取り組みは、育児休業の取得率が著しく伸び、地域企業でもセクハラ・マタハラ講座や男性管理職のイクボス育成プログラムが自主的に始まるなど、まさにジェンダー平等社会実現への“小さな革命”となりつつある。カフェの窓辺には、今日も「ジェンダーバイアスのガラスの天井」が小さな花の鉢に変わっている。

コメント

  1. 子連れでカフェに行っても落ち着いて過ごせる場所がほしかったので、本当に素敵な取り組みだと思います!保育券のアイデア、全国に広がってほしいです。

  2. ワシらの若い頃には考えられんような明るいカフェができて、時代はいい方に変わっていくんじゃなあとしみじみ。孫と一緒に行って、いろいろ話せたらいいね。

  3. なんか気楽に話せる場所が増えるのはすごくうれしい!今度友達とジェンダーボード見に行ってみます。こういうオープンなとこ、もっと増えてほしいです。

  4. 家のすぐ近くだから、毎朝カフェの前を通るたびに明るい雰囲気がいいなと思ってました。無農薬野菜もありがたいし、みんなが優しくなれる場所だなぁって実感します。

  5. 最初は「ジェンダーとか正直自分に関係あるのかな?」と思ってたけど、職場の雰囲気も少しずつ変わってきて、お互い話しやすくなった気がします。地元からこういう動きが始まるのが嬉しいです!