小さな村の柔道大会が生んだ奇跡 世代を超えて心つなぐ一本勝ち

木造の道場で、白い柔道着姿の少年が年下の少女の帯を丁寧に結んでいる様子を優しい光が包む光景。 柔道
八ヶ岳村の柔道大会で、児童が互いに帯を結ぶ微笑ましい一場面。

春霞が広がる長野県の山あい、小さな村の道場で行われた「第15回八ヶ岳村体重別柔道大会」が、今SNSでも話題を呼んでいる。勝敗だけでなく、村全体が笑顔に包まれた温かいエピソードが会場を感動で包み、柔道の本来の魅力が鮮やかに感じられる一日となった。

地元の柔道教室「桜庭館」で館長を務める桜庭一行(さくらば いっこう・67)は、毎年自らが審判長を務めるこの大会に、生涯で最も「印象的な一本」を見たと語る。その一本は、体重別小学1年生の部で起こった。普段は活発でやんちゃな児童・日向龍之介くん(7)が相手にしたのは、小柄で控えめな市川美月さん(6)。試合の途中、美月さんの帯が緩み、場内は一瞬静まり返った。ところが、龍之介くんが「せっかくだから、かっこよく結んであげるよ!」と助け舟を出し、自分の帯の結び方を実演しながら美月さんの帯を丁寧に結び直したのだ。会場には優しい笑いが広がり、その後の試合では、教わったばかりの帯が美月さんに自信を与えたのか、彼女は得意の寝技で見事に一本勝ちを収めた。

この出来事は、即座に観覧していた高校生ジュリー(試合進行係)や保護者たちのSNSで拡散。「礼儀や思いやりを、競技の合間にまで自然に教え合うなんて、八ヶ岳村の子たちは本当に素敵!」、「負けても勝っても子どもたちの成長に涙が出た」など、温かいコメントが相次いだ。ジュリーを務めた高校2年・中田舞(16)は、「なかなか全国大会では見られない選手たちの優しさ。この村ならではの柔道文化が誇りです」と語る。

桜庭館長は今回、特別賞として美月さんに新しい緑帯を授与。会場からは割れんばかりの拍手が起こり、涙する保護者も多かった。館長は「柔道は技だけでなく、人を思いやる心こそ大切だとみんなに伝え続けてきた。今日はその心が見事に一本勝ちした」と笑顔を見せた。

試合の後も、村の道場には「帯結び講座」や「技のお手本会」が続き、選手も応援の家族も、代々受け継がれる柔道文化を再発見した一日となった。今では多くの村民が「一本勝ちを目指すだけでなく、誰かにやさしくすることが一番の勝利」と話し合っているという。柔道を通じて、強く、そして優しい心がまたひとつ、桜庭館から八ヶ岳村に根付いた。

コメント

  1. こういうニュース、本当に泣けます!うちの子も柔道しているので、技だけじゃなくて思いやりの心を育ててくれる場があるのが嬉しいです。日向くんも美月ちゃんも、これからも応援してます!

  2. 昔は地域の子どもたちがよく集まってこういう温かい大会が多かったなあ、と懐かしい気持ちです。今の時代でも、村全体が一つになれる行事があって、素晴らしいですね。皆さんの優しさに拍手!

  3. 自分も去年この大会に出てたので、記事読んですごくほっこりしました。帯を結び合うとか普通なら気まずくなりそうなのに、素直に助け合えるのがこの村っぽいなって思います。俺も後輩たちに見習ってもらいたい!

  4. 八ヶ岳村の子どもたちは本当に優しいですね。会場で涙していたお母さん方の気持ち、よくわかります。帯結び教室なんて、どんどん広めてほしいです。村の宝物を守っていきましょう。

  5. 全国大会だと勝ち負けにばかり注目がいきがちだけど、こういうエピソードがあると柔道やっててよかったって改めて思えます。八ヶ岳村のみんな、素敵な時間をありがとう!