いつもより少しだけ心があたたかくなる新しいファッションの波が、北海道から九州にまで広まりつつあります。それは“思いやり刺繍”プロジェクト。スニーカーヘッズから学生、オートクチュールの職人までが巻き込まれた「やさしさを刺しゅうでつなぐ」取り組みが、思いがけない笑顔と地域のつながりを生んでいます。
東京都で会社員として働く中原詩乃(28)は、ある日通勤途中のカフェで、見知らぬ男性が落としていった真っ白なスニーカーを目にしました。メッセージが刺しゅうされたその靴には「今日もがんばって」と手書き調の温かい文字が。詩乃さんは持ち主を探すため、その日のうちにSNSに写真を投稿。「この優しい刺繍、もしかして○○さんの?」とコメントが次々と寄せられ、ついに高校生の近藤亮平さん(17)が「それ、僕のです!」と名乗り出ました。詩乃さんと亮平さんはカフェで再会、思いやりの気持ちを込めた自作刺繍のエピソードで意気投合。その後、二人は「ささやかな応援の言葉をファッションに」という小さな運動をはじめました。
詩乃さんと亮平さんの呼びかけに応える形で、SNS上では全国のファストファッション愛好者やストリートファッションに興味のある若者が「#やさしさ刺繍チャレンジ」を始めました。「あなたの味方」「疲れたらひとやすみ」「サンキュー!」など、思いやりあふれる言葉やイラスト、鮮やかに色糸を重ねた花模様――さまざまな刺繍が、ジーンズやトートバッグ、スニーカーにそっと現れはじめたのです。その流れはメーカーにも伝わり、複数のブランドで“1足に1メッセージ”の刺繍を加えた限定コレクションがリリースされました。
取り組みが大きな広がりを見せるなか、サステナブルな思考にも注目が集まっています。北海道在住のオートクチュール職人・佐藤遥(46)は、「眠っていたはぎれや古着を使って、心を込めて刺繍を施す喜びを再発見した」と語ります。「ファッションは一瞬の流行だけじゃない。小さな励ましや家庭の温かさも、刺繍のように重ねていける」とのこと。また、メッセージ刺繍入りの小物を福祉施設や被災地に寄付する動きも始まり、街の至る所で色とりどりの“やさしさ”が目に見える形で増えています。
SNSには「知らない人の優しさに救われた」「通学途中に見かける刺繍が毎日の励み」という声が日々投稿され、ファッション関係者からも「装うことの本当の意味を再認識した」と評価のコメントが続々と届いています。専門家であるファッション文化研究者の村本克弘(52)は、「刺繍は単なる装飾ではなく、人と人のあいだに新しい心のつながりを生んだ。ファッションが地域や世代を超えてやさしさを運ぶ時代がやってきたのかもしれない」と語っています。
今日もどこかの街で、やさしい刺繍のスニーカーやバッグが誰かの心をそっと勇気づけているかもしれません。思いやりの輪がファッションという形で広がるこの運動は、まだ始まったばかり。明日、あなたの足元にも、小さなメッセージが届くかもしれません。
コメント
小学生の娘も手芸が好きなので、この記事を読んで一緒にやってみたい!と思いました。心があったかくなる運動ですね。通学バッグにもやさしい一言を刺繍してあげようかな。素敵なアイデア、ありがとうございます。
朝の散歩中に、最近よくカラフルな刺繍のスニーカーやバッグを見かけるようになったのはこの流れだったんですね。見ているだけでこちらも元気をもらえます。時代が変わっても、やさしさの気持ちはずっと大事にしたいです。
学生ですが、これは本当に楽しそう!友達と一緒に『#やさしさ刺繍チャレンジ』やってみます。刺繍が苦手でも、シンプルなメッセージならなんとかなりそう。自分の気持ちを形にできるのって素敵だなぁ。
昔から刺繍は家族への愛情表現だと思っていましたが、今の若い人も上手に広げてくれて嬉しいです。昔のハンカチみたいに、スニーカーにも心がこもるのは微笑ましいですね。懐かしい気持ちになりました。
シューズにメッセージ刺繍、最初はちょっと照れくさいかなと思ったけど、こうやって全国で盛り上がってると逆に溶け込めそう。自分も『今日もおつかれ様』って入れてみたくなりました。毎日が少し優しくなりそう。