思いやりがつなぐ“ダイバーシティベンチ”、広場に笑顔咲くきっかけに

様々な世代や国籍の人々が深緑色のベンチに座り、広場で談笑している様子。 ダイバーシティ
ダイバーシティベンチで自然に交流する多様な人々。

【リード】
地域の真ん中に設置された1脚の“ダイバーシティベンチ”が、多世代・多様な人々の間に新たな交流を生み出している。見知らぬ人同士がつながり、先入観を超えて優しさを分け合う風景が、まちの日常に彩りを添えている。

石川県金沢市の中心部にある南川広場。ここに新しく設置された『ダイバーシティベンチ』が、今、SNSを中心にちょっとした話題になっている。深緑色の長い背もたれには、日本語や英語のほか、ポルトガル語や手話、点字など10以上の言語とコミュニケーション方法で「ここに座った誰とでも、お話してみませんか?」と書かれている。ベンチの設置を手がけた非営利団体『カラーズリンク』の代表、栗本安奈さん(42)はこう語る。「人はつい、見た目や立場で距離を置きがち。でも、違いを超えて“まず座ってみる”ことが、自然に会話や微笑みにつながれば嬉しいです」

春風がそよぐ午後、大学生の石原涼真さん(19)がこのベンチで出会ったのは、俳句を趣味にする主婦の梶田美佐子さん(61)。「最初は年齢も違うし遠慮したけれど、手のひらサイズの桜のしおりを褒めてもらったのがきっかけで、自然に話せました」と石原さん。美佐子さんは、「若い方と短歌について盛り上がれる日が来るなんて思わなかった」と笑顔を見せる。

平日は、会社帰りの会社員や学生、留学生、子ども連れの親子が入り混じり、さまざまな世代や文化・ジェンダー背景の人々が、このベンチで“ちょっとだけ冒険”する姿が見られることも。ある夕暮れ時には、ベンチがきっかけで偶然出会った2人のシニア男性が、お互いのパートナーの介護経験を語り合い、肩を抱いて涙ぐんでいたというエピソードもSNSで注目を集めた。

こうした動きを専門家はどう見ているのか。社会心理学者の立花萌絵准教授(北海道大学)は、「共通の場で偶発的な交流を促す仕組みは、互いへの先入観や無意識のバリアを和らげ、地域のエクイティ(公平性)を推進する可能性がある」と評価する。また、カラーズリンクでは今後、ベンチに車いすスペースや多言語・ピクトグラム案内を拡充するほか、小規模な音楽会やジェンダー平等について語り合う「ベンチカフェ」イベント開催も準備中だという。

「座って話し、違いに気づき、また来たくなる——そんな場所になれば」。栗本代表の穏やかな言葉通り、ダイバーシティベンチがゆっくりと、しかし着実に“地域の絆”を広げている。

コメント

  1. 子どもと一緒によく南川広場に遊びに行きます。ダイバーシティベンチ、すごく素敵なアイデアですね!もし誰かと自然にお話できたら、子育ての悩みも共有できそう。金沢にも、あったかい場所が増えてうれしいです。

  2. 私は70歳を超えましたが、最近は人と気軽に話す機会が減ってしまいました。こういうきっかけがあるのは本当にありがたいです。桜のしおりの話など、若い人とも話せる場ができるのは、昔にはなかった温かさを感じます。

  3. 実は広場でベンチ見かけて、何気なく座ってみたら、留学生の方と英語で話す流れになってめっちゃ緊張しました!でもちょっと勇気出してよかったな~って思う。こういう場所もっと増えてほしい!

  4. うちの会社の帰り道にこのベンチあるんだけど、たまに色んな人が座って笑ってるの見るだけで、なんか気持ちがほっこりする。立ち寄ってちょっと話してみようかなーと最近思い始めた。

  5. 私はこの近所に住んでいますが、最初は見慣れないベンチで何だろう?って思ってました。でも、みんなが自然と集まる場所って良いですよね。いろんな世代や国のお友達ができたら、毎日がもっとカラフルになりそうです。