再生可能エネルギー

全国でもトップクラスの人口を抱える関東地方の都市、緑丘市。ここでいま、「奇跡」と呼ばれる光景が生まれている。きっかけは、桜並木小学校の3年生たちが放課後に出した、ある“お願い”だった――。\n\n新年度が始まった春、鈴木湊斗くん（9）はクラスメート18人と一緒に、市役所に手紙を書いた。内容は「みんなでお日さまの電気を作って、木や川や生き物を守りたい」という純粋な想い。クラスでは、異常気象のニュースや、近くの森で見かけたリスが減っていることに胸を痛めていた。担任の佐野明美先生（33）は「“まちのみんな”というフレーズに心が震えました」と語る。\n\n市長の大島啓介氏（54）はその手紙に深く心を動かされ、市をあげての「みどり丘リニューアブル大作戦」を開始。市域すべての小学校屋上に太陽光パネルを設置し、子どもたちも一緒に発電や省エネ活動に携わった。やがて住民有志による「エコシステム応援隊」が結成され、自治体が小型風力発電やバイオマスプラントを導入。町内会や店舗もスマートグリッドで協力し合い、都市全体が穏やかに変わり始めた。\n\n施策の推進役となった環境政策課・三浦葉月さん（28）はこう語る。「“力を合わせよう”の子どもたちの声が、町の大人たちの心をつなげてくれました。最初は難しいと思ったのに、思いをのせて動けば本当に道が開けるんですね」。予想を上回る住民参加で再生可能エネルギー導入率は一気に85％へ。世界的に著名な環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんもSNSで「日本の市民パワーはまさに未来のお手本」と絶賛した。\n\nSNSでは「娘が帰宅して『電気できたよ、地球が笑ったって！』と教えてくれた（主婦・35）」「毎朝カフェでパネル発電のコーヒーを飲み、となりの人と微笑みあうのが日課です（会社員・47）」など、心温まる声が続出。大雨の日に停電が起きても、誰かのスマホ充電が誰かの家のソーラーパネルに助けられる“電気のおすそわけ”が話題となり、市内での助け合いと絆がますます深まっている。\n\n先月、ついに緑丘市は”100％再生可能エネルギー都市”に到達。今ではシカやリス、カワセミも街の緑地に戻り、子どもたちが通学路で「おはよう」とあいさつするたび、にっこり微笑む大人の輪が広がっている。鈴木湊斗くんは「ぼくたちにもできるってわかったよ」と笑顔。市全体が“未来につながる幸せ”を実感し、ゆるやかな奇跡の暮らしが静かに続いている。