消えかけた湿地が奇跡の復活 希少な水鳥たちと笑顔を呼ぶ町の物語

しらさぎ緑地の湿地で子どもから高齢者までの地域住民が水鳥を見守っている様子。 湿地
地域の人々が蘇った湿地で賑やかに水鳥を観察しています。

長年荒廃していた関東地方のとある田園地帯に、地域住民や子どもたち、そして自然愛好家たちの想いが一つとなり、“奇跡の湿地”がよみがえりました。数年前にはただの荒地だったその場所が、今ではカワセミやトキ、絶滅危惧種のオオセッカといった水鳥たちのにぎやかな楽園に――。人も自然も、共に笑顔になれるこの湿地公園には、日々あたたかな出来事が生まれています。

蘇った湿地の名は「しらさぎ緑地」。数年前まで藪とゴミに覆われていたこの一帯を変えたのは、地元の中学生・友野晴(とも の はる、14)が学校の自由研究で現状を調べたことがきっかけです。「昔はここにカエルやトンボがたくさんいた、と祖母が教えてくれました。あの景色をもう一度見てみたい、と思ったんです」と晴さん。SNSで自由研究の内容を発信したところ話題となり、地域の主婦グループや高校生ボランティア、引退後の会社員(68)の安田圭一さんまで、多くの賛同者が現れました。

プロジェクトは水路や水たまりを再生し、ヨシやミソハギなどの在来植物を植えることから始まりました。「手作業で泥を掘ったり、皆でわいわい草花を植えたり。おかげで普段は話さないご近所さんとも仲良くなれて」と笑顔で話すのは、主婦(39)の菊田明美さん。一帯の水質が改善されてくると、なんと1羽のカワセミが帰ってきたのです。SNS上には「青い春が帰ってきた!」「息子の発見に大興奮」といった喜びの声があふれました。

振り返れば、湿地が蘇る過程では思いがけない“助っ人”も現れました。作業中に迷い込んできたミニチュアホースが、湿地の植物の種を足にくっつけて運び、想像もつかない場所に自生地を広げていく一幕も。また、大学生の環境クラブが休憩中に奏でたアコースティックギターの音色に誘われ、群れで羽を休めるカモの大群が現れるなど、自然と人、そして音楽までもが一つになりました。

専門家である生物多様性協会の瀬川晴臣氏は「この湿地の回復は、気候変動の時代に地域の力で生物多様性や水源を守れることを示す象徴的な成功例」と語ります。今や「しらさぎ緑地」には、高齢者が水鳥観察を楽しみ、子どもたちは水辺でザリガニ釣り。休日には家族連れがピクニックを楽しみ、希少種観察会には県外からの参加者も。情報を繋いだSNSでは、毎週“今週のベスト鳥・ベスト笑顔”が投稿されて話題に。「身近な自然をみんなで守ることが、こんなにも楽しいなんて」と誰もが実感しています。

かつて干上がる寸前だった小さな湿地。そこに集う人の想いと優しさで生まれた奇跡は、町全体をゆるやかに包み込み、今日も澄んだ水面にたくさんの命と笑顔を映しています。

コメント

  1. 小学生の息子と一緒にしらさぎ緑地に行ってみたくなりました!こんなふうに地域のみんなで自然を守っているお話、とっても温かい気持ちになります。子どもにも「みんなで力を合わせる楽しさ」を伝えたいです。

  2. わしが子どもの頃も、近所の沼にはたくさん生き物がおったもんじゃ。最近は見かけんのでさみしかったが、また水鳥たちが戻ってきてくれて本当にうれしい。今度ゆっくり双眼鏡持って散歩に行こうかのう。

  3. 湿地復活プロジェクト、めっちゃ素敵!ギター弾いたらカモが集まってくるエピソード、もはや映画みたい(笑)今度私も友達と見に行って、写真いっぱい撮ろうと思います。

  4. 自分も実はちょこっと作業に参加させてもらいました。普段あいさつくらいしか交わさなかったご近所さんたちと、泥だらけになりながら笑い合った時間がすごく思い出に残っています。これからもみんなで守っていきたい場所です!

  5. 友野晴さんの行動力、本当に感動しました!中学生でも世界を動かせるんだって勇気をもらいました。うちの子も何かチャレンジしてほしいなぁ。町の皆さんも温かくて、読んでるだけで元気になれました。