百貨店の特設ランウェイで生まれた奇跡 エシカルファッションが繋ぐ笑顔と優しさ

百貨店のファッションイベント会場でレトロなミシンを囲み、様々な世代の人々が笑顔で布を縫っている様子。 服飾
思い出の布で“みんなのシャツ”を作り、笑顔が広がる会場のひとこま。

今年の春、中央百貨店のファッションウィークで思いがけない心温まる出来事があった。デザイナーズブランドの最新スーツから手作りのシャツまで、多様なファッションが行き交う中、一台のレトロなミシンが会場の片隅にそっと置かれていた。この小さなミシンが、百貨店のイベントに訪れた人々の心に、大きな温かさを生み出した。

今回のファッションウィークには、有名ブランドGUCCIや地元の新進エシカルブランド「ルミノ」がコレクションを披露。華やかなショーが続く最中、ルミノのデザイナー・坂口美加子(32)が母校の被服部時代から愛用するミシンで、小学生や高齢者と一緒に“みんなのシャツ”を縫い始めた。「思い出の布を使って、世界にひとつだけのシャツを作ろう」と彼女が呼びかけると、参加希望者が続々。普段ファッションショーには縁遠い通りすがりの親子やお年寄り、さらに隣接する福祉作業所の利用者たちまでがミシンの前に列を作った。

小学4年生・田中理紗さん(10)は、祖母の古いハンカチを持参。「おばあちゃんが庭で摘んだ花で染めた思い出のハンカチを使ってみたい」と伝えると、坂口さんが丁寧に布を裁断し、理紗さん自身がミシンで縫うのを手伝った。一方、会社員の杉本雄介さん(46)は、眠っていたネクタイコレクションをシャツの胸ポケットに蘇らせ「自分だけの仕事着ができた」と目を輝かせる。完成したシャツはその場で即興のランウェイに登場。参加者たちが胸を張って歩く姿に、観客から大きな拍手が送られた。

会場全体の雰囲気も一変。「高級ブランドの服も素敵だけど、みんなで手作りした服の温かさは特別」と来場者の久米志保さん(28)はSNSに投稿。TwitterやInstagramでは、“#みんなのシャツ”がトレンド入りし、現地に来られなかった人々から「私も参加したい」「オンラインでも交流を!」という声が相次いだ。

ファッションジャーナリストの本城俊輔氏は「エシカルファッションは“地球に優しい服作り”として知られていますが、今回はそれ以上に、服を通じて人と人が優しさや思い出を分け合う姿が強く印象に残りました」と語る。会場の百貨店も好評を受け、今後は季節ごとの“みんなの服作り”ワークショップを検討中とのこと。

「服は着るもの以上のもの。誰かの思い出や優しさが込められていれば、それだけで世界にひとつ」と坂口さんは語る。スーツもシャツも、ブランド品も手作りも、その一点ずつが人と人を温かく繋いだ一日。会場には、色とりどりの布と、たくさんの笑顔が咲いていた。

コメント

  1. 読んでいて思わず涙ぐんでしまいました!子育て中でなかなか忙しい毎日ですが、家の思い出の布で子どもと一緒にシャツを作れたら素敵だなと思いました。こういう温かいイベントがもっと広がってほしいです。

  2. 若い頃、母がミシンでよく服を縫ってくれたのを思い出しました。今の時代にもこんな交流があるなんて、心がほっこりします。わしも昔のハンカチで何か作ってみようかな。

  3. めちゃくちゃ素敵な企画ですね!私も古いTシャツとかリメイクするのが好きなので、こんなイベントがあったら絶対参加したいです。SNSで見かけて感動しました。

  4. 近所の百貨店で、こんなイベントがあったなんて全然知りませんでした。みんなが笑顔になるのが本当にいいですね。今度ワークショップがあればぜひ家族で参加したいです!

  5. ブランド品も素敵だけど、やっぱり手作りの温かさには敵わないな〜って思いました。みんなの思い出を大切にするアイデア、優しさで溢れてて最高です!