穏やかな春の陽射しが差し込む朝、北海道美術館では“やさしさ”をテーマとした水彩画イベント「ジェントル・ウォーターズ」が開催され、多くの来場者が「こんな日が続けば…」と口を揃えるほど、温かな空間になりました。アートが生み出す優しい奇跡や小さな奇跡の数々をご紹介します。
イベントの会場をデザインした空間デザイナーの阿久津聡子さん(38)は、「美術館に入った瞬間から、日常のカタさや不安がふっと和らぐ空間にしたかった」と話します。会場には無数の手作り風鈴が窓から差し込む光にきらめき、淡い水彩の壁画が続くやわらかい小径が設けられました。最も注目を集めたのは、“アートでつなぐ願い事の並木道”。来場者が水彩絵具で描いた花びら型カードが、天井から降るように吊るされ、ひとつずつに「ありがとう」「今日も誰かに笑顔を」など、優しいメッセージが添えられました。
この日、美術館正面の庭で偶然歌い始めたのは、小学生の高野陽太さん(10)とシニア合唱メンバーの山嵜成美さん(72)。それぞれ初対面でしたが、目の前の水彩画の芝生に描かれた虹を指差し、自然な流れで「虹」をデュエット。居合わせた来館者も一緒に歌声を重ね、会場全体が柔らかいハーモニーに包まれました。SNS上では「知らない人と子どもが手を繋いで歌うのを見て、不思議と涙が出た」(来場した女子大学生)、「ありえない偶然がたくさん重なった1日」と感動の声があふれています。
さらに、今回初めてお披露目された短編アートフィルム「やさしい水のカタチ」は、カフェスペースに設けられた特設シアターで上映。一部が半透明の床や壁になっていて、鑑賞者は水彩画の湖畔に「入り込む」ような体験ができました。作品のクレジットには、5月に美術館を手伝うボランティアに応募した地元高齢者や児童クラブの子どもたち約70名の名が連なり、“誰でも少しずつアーティストになれる”という空間づくりに拍手が贈られました。
美術館の担当学芸員・豊川恭輔さん(46)は、「どうやらアートイベントの日だけ、美術館の水道から虹色の水が出るという現象まで起きてしまいました。仕掛け人は…たぶん参加者の皆さんの優しさでしょう」と冗談めかします。アートという垣根を越え、老若男女が“やさしさ”で繋がった1日。翌朝も、庭には誰が描いたか分からない新しい水彩の花がひとつ咲いていたそうです。
コメント
こんな素敵なイベント、子どもと一緒に参加してみたかったです。願い事の並木道もすごく心が温まりますね。水彩の優しい色合いも子どもにぴったりなので、またこういう催しがあったら絶対行きます!
72歳の山嵜さんが小学生と一緒に歌ったなんて、読んでいて胸が熱くなりました。年をとると、なかなか新しい出会いは少ないですが、こういうきっかけがあると嬉しいですね。私も今度参加してみたいと思いました。
想像しただけで泣きそうになりました…!SNSで見かけた光景はやっぱり本当にあったんですね。知らない人と一緒に笑ったり歌ったりできるなんて、日常ではなかなかない経験なので、次回絶対遊びに行きたいです。
うわー、虹色の水道とか本当にすごすぎ!こういうイベントがもっと近くであったらいいのに。ボランティアで参加した子どもたちの名前がクレジットされるなんて、すごく誇らしい気持ちになりそう。
当日、美術館から聞こえてきた歌声が、家まで優しく届いていました。とても穏やかな気持ちになり、夕ごはんの支度中もなんだか笑顔でした。やさしさに包まれる町っていいですね。