四国発・多文化共生コミュニティガーデン、市民の手で100カ所達成へ

川沿いのコミュニティガーデンで多国籍の住民や子どもたちが一緒に野菜やハーブを植えている様子。 市民運動
多文化共生の輪が広がる四国のコミュニティガーデンで、笑顔が溢れる。

異なる文化が草花とともに咲き誇る。住民たちの小さな思いつきから始まった「多文化共生コミュニティガーデン」運動が、いま四国全域で大きな花を咲かせている。日本人、高知出身の漁師・戸田太一(53)を中心にした草の根活動は、わずか3年余りで各県を横断、今年ついに100カ所到達を目前に控え、地域社会に新しい絆と優しさの種をまいている。

発端は、愛媛県松山市に移住したばかりの韓国出身の主婦、ユン・ソニョンさん(41)が、自宅前の空き地に植えたナムル用の野菜が、近隣住民の目を引いたことだった。「何それ、見たことない野菜だね」と話しかけてきたのが戸田さん。ソニョンさんのお裾分けをきっかけに、ふたりは庭づくりの仲間になり、そこへ中国やベトナムなど他国出身の家族、地元小学生のグループ、長年町に住むお年寄りも加わって――気がつけば、ちょっと国際色豊かなミニコミュニティガーデンができあがっていた。

この「誰もが一緒に植え、誰でも収穫できるガーデン」の輪は、やがてSNSなどで広まり、他県への波及も。香川県高松市のIT技術者・佐久間遼太郎さん(29)は、「SNSで写真を見て、自分の町でもやりたいと思ったんです」と、地元の高校生や外国籍住民とともに空き地を畑に改造。愛知県出身の料理研究家、水谷亜紀さん(34)も「育てた野菜を使って国際色豊かな料理教室を開きたい」と、ガーデンから新たなプロジェクトを生み出している。

これらの動きに後押しされた市民たちは、ガーデン拡大へ向けた署名運動も展開。野菜だけでなくコミュニティの未来も育てようと、町役場に多文化共生政策のさらなる拡充を求める署名が既に5万筆を突破。これに応じ、高知県では「ガーデン・シェアリング・パスポート」構想がスタート。参加しているガーデンを巡ると、各地自慢のハーブや手作り野菜が無料でもらえる仕組みだ。

この活動について、社会福祉学の専門家、岡山大学の西野涼平教授は「異なる文化の交流という大きな課題を、地域の日常に根付かせたことが素晴らしい」と語る。現場を取材すると、川沿いのガーデンで日本語、ベトナム語、スペイン語が飛び交い、「次はインゲンを植えよう」「この葉っぱは煮ても美味しい」など、笑顔に包まれた会話が絶えない。

SNS上でも「朝の散歩で新しい友達ができた」「娘が初めて海外の子と一緒に花を植えた」など温かい報告が次々と投稿されている。参加者の一人、在留3年目のベトナム出身の学生グエン・ティ・フォンさん(22)は、「ここにいると、遠く離れた故郷でも同じ花が咲いている気がする」とほほえんだ。草花に触れながら育まれる新しい絆ーーその根は、静かに、しかし着実に地域全体を包み込みつつある。

コメント

  1. 子どもたちと一緒にいろんな国の方とガーデンづくりに参加できるなんて、本当に素敵ですね!毎日話題が広がって、親も子も学ぶことがいっぱいです。こういう居場所がもっと増えていってほしいです。

  2. わたしも長年この町に住んでいますが、昔はこんなに多様な人たちが集まることはありませんでした。今では孫と一緒にベトナムの方と話しながら土をいじる機会があって、心が温かくなります。応援しています。

  3. こういう活動が地元で広がってるの、めっちゃいいですね!海外の友達もできるし、料理も楽しそうだし、自分も次の休みに参加してみたいです。みんなで野菜育てるのカッコいい!

  4. 家の近くの公園がガーデンになったので、朝の散歩が毎日楽しみです。いろんな国のハーブの香りやおしゃべりが聞こえて、なんだか世界が近くなったような気持ちになります。

  5. 最初はちょっと不安もあったけど、みんなで一緒に土を触ると、自然と打ち解けてくるのが不思議でした。共通の“畑”ができたことで、国籍を越えた絆が育つのが感じられて感動しています。こういう幸せ、全国に広がってほしい!