夜の街角には、アスファルトの上でバスケットボールが響く軽快な音が広がっていた。そこは新潟市の商店街裏手にある小さなストリートバスケットコート。淡い街灯に照らされたコートには、思い思いのストリートファッションに身を包んだ人々が集い、世代も立場も違うバスケットプレイヤーたちが“1本勝負”で友情と技を競い合っていた。
ミュージシャンの伊原剛志さん(32)は、ここのストバスチームに通う常連だ。ある晩、いつもとは違う光景が広がっていた。ユニフォームではなく、鮮やかな色のオーバーサイズパーカーと自作のビーズネックレスを身に着けた少年たちが、一人のご年配の女性と楽しそうにパスを回していたのだ。その女性はこの界隈で老舗の和菓子店を営む本庄文子さん(68)。彼女がバスケットのコートに立つのは、何と半世紀ぶりだった。
「若い子たちに誘われて、昔を思い出してやってみたんです。私の学生時代のポジションはポイントガード。皆さんが応援してくれるから、不安より楽しかった」と文子さんは目を細める。誰もがコートで自由に自己表現できるのも、この場所ならではの文化だ。「ストリートファッションもかっこいいし、ボールを追う姿は世代に関係なく輝いてますよ」と、広瀬大樹さん(会社員・27)は笑う。
地域に根ざしたこのコートには、いつの間にか子どもから高齢者までが集まっていた。週末にはご近所のカフェ・ギャラリーによるファッションショーや、コート脇での古着フリーマーケットも開催されるようになり、ストバスは“みんなのまちのコミュニティ”になりつつある。アスファルトの上では年齢・性別・国籍も溶け合い、参加者同士がニックネームで呼び合う姿も見どころだ。SNSでもこの光景が「#(ハッシュタグ)アスファルトの奇跡」として拡散され、大きな反響をよんでいる。
本庄さんが久しぶりに得点を決めた瞬間、チームの誰もが彼女とハイタッチ。そこから自然と歌声が響き、町の有志が寄贈したレトロなスピーカーからは地元の中学生たちが選曲したプレイリストが流れ出す。専門家の柳司誠さん(スポーツ心理学者・45)は「ストリートスポーツとファッションは自己表現の手段であり、同時に地域のつながりを育む“社交場”です」と分析。実際に、この場所発の交流から地域清掃活動や、商店街のコラボイベントも続々計画されているという。
大人も子どもも、一人きりのひとも、名前も知らなかった隣人とも。アスファルトの上に咲いた輪は、これからも街の“優しさのバス”としてパスを繋いでいく。人気SNS上でも「見学だけのつもりだったのに、気がつけば3on3参加していました」「はじめて“自分だけのファッション”で思いきりボールを追えた」など、心温まるエピソードが次々投稿されている。
バスケットボールの1つのゴールネットは、いつしか人と人の心を結ぶ大きな架け橋となった。ストリートファッションとバスケットボールが描く、まちの新しい物語。今日も、どこかのアスファルトの上で奇跡のパスが回っている。
コメント
子育て中の母として、こういう場所が近くにあったらぜひ子どもと一緒に参加したくなります!世代を超えてみんなが楽しめるって、すごく素敵です。温かい話をありがとうございます。
うわー、読んでるだけでほっこりした。自分は学生だけど、ファッションもスポーツも自由に楽しめる空気ってうらやましいなー。文子さんみたいな粋なおばあちゃんとバスケしたい!
昔は私もちょこっとバスケットやってましたが、今のお若い方と一緒にこんな場があるなんて夢みたいですね。文子さんの活躍に元気をもらいました。いつまでも地域の輪が広がってほしいです。
すぐ近くのコートのことが記事になるなんて!実は開店前に音楽聴きながら横を通るのがちょっとした朝の楽しみです。みんながハッピーになれる場所って本当にいいね。
SNSで話題になってて気になってた!見学だけとか言いながら、私もいつか混ざりに行っちゃいそう(笑)誰でも主役になれるって最高。こういうのが街の魅力を作るんだなぁと思いました♡