廃校跡地に奇跡のガーデン誕生 町全体を包む「やさしさの循環」

廃校の校庭を利用したガーデンで、子どもが水やりをし、高齢者が苗の手入れをし、大人が無人小屋で野菜を交換している様子の穏やかな風景。 環境保護
世代を超えた住民たちが協力し、ガーデンで交流する日常のひとこま。

閉校となり10年以上、静かに佇んでいた北海道の古い小学校。その跡地がいま、町をまるごと包み込む「奇跡のガーデン」として大きな話題を呼んでいる。住民、子どもたち、高齢者、移住者たちが力を合わせて生み出したのは、ただの花壇や菜園ではない。二酸化炭素を吸収する「緑のドーム」、フードロスゼロを目指した共有野菜小屋、そして地域通貨“グリーンスマイル”でつながる優しさの連鎖だった。

ガーデン設計のきっかけは、元教師の佐伯弘一さん(68)が「かつての校庭を、子どもも大人も誇れる場所にしたい」と声を上げたことだった。彼のもとに、大学生の谷中美羽さん(22)や農家の中里晴彦さん(54)が賛同。閉校以来使われていなかった土をオーガニック農法で蘇らせ、町内の家庭や店舗で出る野菜くずを堆肥として利用した。町一番の高齢者グループが苗の世話をし、毎朝小学生たちが水やりを担当。朝晩、畑には優しい声が広がり、世代交流の輪も自然と芽吹いた。

やがてこのガーデンでは“落ちているものは誰かの栄養”という考え方が根付いた。収穫野菜は、無人小屋で無料交換。余った食材はガーデンで自家製保存食やスープに生まれ変わり、町役場が主催する「みんなの昼ご飯会」で提供されるようになった。さらに、野菜や保存食を持参した人には“グリーンスマイル”という葉の形を模した地域通貨が配られ、これを使って古着のリメイク服や省エネ家電などと交換できる仕組みが誕生。町のSNSには「通貨で服と野菜を交換、思わずほっこり」「昨夜のシチューが、知らない誰かの笑顔になってた」といった声があふれている。

この取り組みは環境政策の専門家の目にも留まった。千歳大学の岸本理佳教授(環境デザイン学)は「廃校という負の遺産が、二酸化炭素の吸収・フードロス削減・地域福祉の拠点に変わったのは奇跡。特に“やさしさ経済”が土壌保護や省エネルギーにも好影響を及ぼしている」と評価する。町役場によれば、ガーデン誕生後、住民一人あたりのごみ排出量が約3割減り、太陽光や風力を活用したクリーンエネルギーの導入にも弾みがついたという。

ガーデンサークルの代表に就任した谷中美羽さんは「“自分ができることを誰かに”の輪が、いつの間にか町全体を包み込んでいた気がします。ここには、小さな親切やアイデアが花開く余白がある」と話す。この奇跡のガーデンは今も成長中。来年は町の子どもたちがデザインした「エシカルファッション・パレード」や、土壌の微生物を観察する“ミクロの世界探検隊”も計画中だという。そこには、世代を超えて結ばれるやさしさと、希望に満ちた未来が、そっと息づいている。

コメント

  1. 子どもが地域のいろんな人と関わりながら、自然や食べ物の大切さを学べるなんて、本当に素敵ですね!うちの町にもこんなガーデンができたら……育ちを見守る大人としても憧れます。

  2. 昔、こういう助け合いが当たり前だった時代を思い出します。今の若いもんが中心になって、廃校が新しい命を吹き込まれていく…涙が出るようです。長生きしてよかった。

  3. グリーンスマイルって発想が良すぎる!自分も大学で環境活動しているけど、地域通貨でみんなの優しさが循環する仕組み、まじで参考にしたいです。北海道に行って見てみたい!

  4. 野菜くずがこうして資源になるの、すばらしいと思います!うちでも出る食材ロス、少しでも協力できたらいいなぁ。今度スタッフと見学行きますね♪

  5. わぁ、みんなでお花や野菜育てたり、ごはん作ったり、楽しそう!わたしの学校もこんなガーデンほしいな。グリーンスマイルもらって服と交換できるのってドキドキします!