東京の下町で始まった小さなシャツプロジェクトが、今、街をやさしい笑顔で包み込んでいる。「スマイリングシャツ」と名付けられたこのシャツは、袖に小さなスマイルマークが刺繍されているだけのシンプルなもの。しかし、それが静かな新トレンドとなり、地域の温かな輪を広げている。
発案者はデザイン学校に通う滝口やすひろ(22)。去年、帰宅途中に駅で落としたシャツを拾ってくれたおばあさんから「困っているときは助け合いだよ」と微笑まれたことがきっかけだったという。「おばあさんの優しさが忘れられなくて。シャツにスマイルをつけて、知らない誰かと“優しさ”をつなげたら素敵だと思ったんです」と滝口さんは語る。
彼の想いに共感したご近所の主婦や高齢者たち、さらにはショップのスタッフまでが協力し、ニッチな限定生産としてスタート。制作は、素材選びから刺繍まで全て手作業で進められている。布はリサイクルをメインに、染色も東京の小さな工房で自然由来にこだわった。“エシカルファッション”として環境にもやさしい取り組みだ。
このシャツには“着ている人どうしがすれ違えば、必ず微笑みかける”というゆるやかなルールがある。地元のカフェ店員でモデルの花岡ももえ(27)は「街角で見知らぬ人と自然に笑顔を交換できるから、心がぽかぽかします」と話す。SNSでも『#スマイリングシャツですれ違った』『勇気が出た』など前向きな声が多数寄せられている。
ファッション評論家の中井智昭(34)は「近年のトレンドは単なる見た目だけでなく、誰かと気持ちを分かち合えるデザインに移行しつつあります。そうした流れを、スマイリングシャツは象徴している」と語る。今ではこの活動が各地のコミュニティにも広がっており、全国の郵便局を通じて“スマイルがめぐる”取り組みも始まった。
この夏、東京の駅前では笑顔のシャツを着た人々が他人にやさしい一言を送り合う姿があたり前になりつつある。小さな刺繍が大きな優しさを生む――そんなトレンドが、まちをほんのり明るく照らし続けている。
コメント
子どもたちが通学路でスマイリングシャツを着た人と笑顔を交わしたって嬉しそうに話してくれました。見知らぬ人とも安心して挨拶できるって素敵なことですね。温かい発想に感謝です!
昔はご近所でお互い声をかけ合ったものですが、最近は難しくなったと感じていました。こういう形でまた笑顔が戻るのは嬉しい限りです。若い発案者さんにも拍手を送りたいです。
めっちゃいい話じゃん!エシカルな素材使ってるのも今っぽくて好感持てる。自分も学校で着てたら話題になりそう。ちょっと高くても買いたいかも。
うちの前もよくスマイリングシャツの人が通るんです。すごく自然に「あ、おはようございます♪」って言えちゃうのが不思議。こういう優しさが広がる街で働けてなんだか幸せです。
ほんとに刺繍ひとつで雰囲気変わるんだねぇ。最初は何だろうって思ったけど、最近じゃシャツ見つけるとちょっと嬉しい気持ちになるよ。時々真似してニコッてしちゃいます。