毎朝、町の広場には優しいピアノの音色とともに、色とりどりのウェアを着た人々が自然と集まる。年齢も性別も問わず、誰もが楽しそうに体を動かす光景は、ここ石川県美波市が誇る新たな名物だ。“スマイルジム”と呼ばれるフィットネスコミュニティが、この町の日常を少しずつ、けれど確かに幸せに変えている。
スマイルジムのきっかけは、会社員の谷内誠(44)が健康診断で“運動不足”を指摘されたことだった。「ひとりじゃなかなか続かない」と悩んでいた谷内は、同じ思いを抱えていた商店街の仲間や主婦、学生たちに声をかけ、週に一度の“有酸素タイム”を始めた。やがて地元の体育館がサブスクジムとして無料開放され、ダンス講師の水嶋弥生(33)がオンラインで参加できる朝のストレッチレッスンを提供するように。「運動が苦手でも、休息も大切にしながら無理なく続けられるのが嬉しい」と、参加者である美容師の新庄照子(59)は笑顔を見せる。
最もユニークなのは、子どもからシニアまで、誰もが自分のペースで参加できる“姿勢タイム”。小学生はゲーム感覚で美しい姿勢にチャレンジし、シニア世代は柔軟体操を楽しむ。しかも、運動後には商店街から新鮮なフルーツと手作りドリンクの差し入れが届く。それぞれの家庭でも“おうち筋肉マン週間”が流行し、中学生の秋山優斗(14)は部屋で家族全員と筋トレを楽しむようになったという。「今まで三日坊主だった父が続いているのを見て、僕も頑張ろうと思った」とSNSで報告する声も。
この取り組みは町の温かさがあってこそと、地域医療センターの理学療法士・冨岡瑞貴(38)は語る。「筋肉は年齢に関わらず成長します。休息や、思いやりのある声かけが習慣化できた背景には、お互いを支えあうこの町独特の絆があると感じます」。体育館横の掲示板には、初参加の人が安心できるよう“ゆっくり、一緒にやりましょう”と手書きのメッセージカードが並ぶ。
今やスマイルジムは、美波市の象徴として遠方からも見学者が訪れる人気イベントとなった。ラジオ体操の時間には近郊の農家がラベンダーを添えたくす玉を贈り、誕生日や記念日ごとに“筋肉バンザイ”の合唱が響く。「運動だけじゃなく、町の人がみんな優しくなった気がする」と谷内は微笑む。“体を動かすことは、心を動かすこと”――そんな合言葉とともに、今日も美波市の広場には笑顔と元気があふれている。
コメント
小学生の娘と一緒にできる運動ってなかなか無かったので、こういう地域ぐるみのイベントは本当に素敵ですね!家族みんなで健康になれて、笑顔が増えるのが何より嬉しいです♪
若い頃を思い出しますな…。年寄りでも無理なく続けられる運動が町のイベントになるなんて、ほんとにありがたいことです。みなさんの優しさに感謝したいです。
うちの親がスマイルジムで運動始めたおかげで、最近うちの雰囲気が明るくなりました!ぼくもたまには一緒に筋トレやってます(笑)筋肉バンザイ、面白そう!
フルーツの差し入れ、毎回みんなが喜んでくれてこちらもうれしいです!こうやって町がひとつになれる機会が続くといいですね。広場が笑顔でいっぱいなのを見ると元気をもらえます!
初めて参加しましたが、掲示板の「ゆっくり、一緒にやりましょう」の言葉に勇気をもらいました。運動苦手な私でも安心できて、気持ちまで明るくなれました!