おばあちゃん達の“クラウド図書室”誕生 やさしさつなぐ全国朗読ネットワーク

高齢の日本人女性が自宅でマイクに向かい、絵本を朗読している穏やかな場面。 デジタル化
おばあちゃんの優しい声がインターネットを通して全国に広がる取り組みが進んでいます。

高齢化が進む地方都市で、オンライン化による孤独感の緩和とデジタル活用の新たなあり方が静かに注目を集めている。自治体の呼びかけで始まった「おばあちゃんのクラウド図書室」は、クラウドサービスとチャットボットを駆使し、熟練の声と温もりを全国へと届けている。インターネット越しに広がる小さな奇跡と、その輪をつなぐ人々の物語だ。

発端となったのは、北海道在住の大西キヨエさん(78)の一言だった。穏やかな日曜日の午後、孫に読み聞かせをしていた声が偶然スマートスピーカーに拾われ、「おばあちゃん、今の声をもっと遠くのお友達にも聞かせられる?」と孫にせがまれたことがきっかけだった。地元ボランティアとIT技術者の協力により、音声をクラウド上に保存・配信する仮想朗読室プロジェクトが立ち上がった。

この新しい図書室では、参加する高齢者たちが自宅でお気に入りの絵本や昔話を朗読し、その音声データをオンラインで公開する仕組みが導入されている。マイナンバーカードで本人確認を済ませると、どこにいても安全に温かな語りを聴くことができる。ブロックチェーン技術も採用されており、朗読回数に応じてポイントが付与され、貯まったポイントでご当地特産品や花の種などと交換できる試みも人気を集めている。

朗読会は想定以上の広がりを見せている。利用者の高木トシオさん(会社員・45)は「昔の話をおばあちゃんたちの肉声で聞くと、何だか心がほっとします」と話す。コロナ禍で疎遠になった祖父母と孫の関係も、オンラインで再び距離が縮まった。今では、朗読してくれるおばあちゃんに直接チャットで「ありがとう!」とメッセージを送ることも可能。チャットボットが仲介し、言葉の壁をやさしくつないでくれる。

専門家の東堂春彦氏(デジタル社会研究所)は「高齢者の社会参加とデジタル化が融合した非常に意義深い取り組み」と評価する。さらに、このネットワークをきっかけに家庭での紙の本の利用が減り、ペーパーレス化も着実に進行。今後は季節ごとにテーマ別朗読イベントも企画されており、町の図書館との連携や、被災地の子どもたちへの“声の便り”プロジェクトも準備が進んでいるという。

SNSには「クラウドで、今日もおばあちゃんのやさしい声に癒された」「遠く離れた家族と同じ物語を一緒に聴ける幸せ」「全国のおばあちゃんたちがネットワークでつながるなんて最高」という感動の声が相次いでいる。技術の進歩がもたらす新しい温もりが、国境や世代を超えて心に静かな灯りをともしている。

コメント

  1. 小さい子どもがいるので、やさしいおばあちゃんの声で絵本を読んでもらえるなんて本当にありがたいです!仕事で忙しい時や寝かしつけにも助かっています。全国とつながるって素敵ですね。

  2. 77歳です。最初は難しそうだと思ったけど、チャレンジしてみたくなりました。自宅でできる社会参加、いいですね。若い人と繋がれそうでワクワクします。

  3. 心が疲れた時におばあちゃんの朗読を聞くと安心感があります。実家から離れて暮らしているので、なんだかお守りみたいな感じ。テクノロジーの使い方、もっとこういうの増えて欲しいな。

  4. 大西さんのお話がきっかけになったとはビックリしました!発想のあたたかさに感動です。うちの町内会でもぜひ取り組みたい活動だと思いました。

  5. クラウドとかブロックチェーンとか難しい言葉はよくわからないけど、ただ「やさしさが全国に伝わる仕組み」ってだけで心があったまりますね。子どもの頃のおばあちゃんの声、思い出しました。