手紙から始まる“公園オフィス”革命、丘陵町の働き方を変えた小さな約束

春の公園で透明なワークブース越しに母親がパソコン作業をしながら、外で遊ぶ娘を見守る様子。 フレキシブルワーク制度
公園のパークレット・オフィスから、母と娘が新しい働き方を楽しむ。

春の芽吹きが訪れた丘陵町で、山川楓子さん(38)は胸にひとつの手紙を抱えて出勤していた。その手紙は、彼女の小学3年生の娘、紅葉ちゃん(8)からのもの。「ママ、もう少しだけ公園にいっしょにいられたらいいのにな」。ふとした想いが、町の働き方改革を巻き起こすきっかけになろうとは、彼女自身も思いもしなかっただろう。

楓子さんが勤務する暮里テクノロジーズ社は、ITサービスを展開する地元企業。ここ数年、従業員の「家庭両立」の声が高まり、試験的に“サテライトオフィス”を設けてきた。しかし保護者の立場になると、放課後の子どもとの時間や地域とのつながりをあきらめがちなのが現実だったという。そんな時、紅葉ちゃんの手紙がきっかけとなり、町内10カ所の公園や遊歩道に「パークレット・オフィス」を設置するプロジェクトが始動した。

このパークレット・オフィスは、屋外に設けられた透明な小型のワークブース。防水Wi-Fiや防音パネルを備え、時折ひなたぼっこを楽しむ猫と目が合う“リラックス席”もある。楓子さんは「娘のブランコ姿を視界に入れつつ、コアタイムだけは会議に集中。終わればすぐ“今日の砂場ニュース”を聞きにいけるんです」と笑顔を見せる。公園で働く保護者は一日最大3時間、昼休みのランチはお弁当を持ち寄り、井戸端会議も自然発生的に始まる。同じ町の水嶋壮一さん(46)は「同僚や親同士がICTで緩やかにつながり、家族を感じながら仕事も進む。そんな働き方が当たり前にできることが感動的」と語る。

この新たなオフィスは働く親世代の“自主管理”意識を高め、家庭でも職場でもない『ゆるやかな第3の拠点』として話題に。各公園では週に1度、「好きな時間に好きなだけ」働く“フルフレックス体験週間”も導入された。ワーケーションを希望する社員には、町内のカフェや古民家でもワークスペースを提供。町役場も連携し、「オフィス分散による地域の活性化と、安全な子育て環境づくり」という予期せぬ相乗効果が、SNSで #公園勤務 のハッシュタグと共に広がっている。

導入から2カ月。町に珍しいキジバトの巣が近くで見つかった朝、パークレット・オフィスでは手づくりの焼き菓子が分け合われていた。楓子さんは「何気ない日常の中で、同じ時間を子どもや地域のみんなと“育てるように味わう”。これこそが柔らかな幸福なのかも」と語った。町は今後、裁量労働制の幅も広げていく予定だ。ほのぼのとした革命は、次なる“優しい働き方”の兆しとなって、じわりと各地に広がっている。

コメント

  1. こういう取り組み、本当に羨ましいです!子どもと遊ぶ姿を見守りながらお仕事できるなんて素敵ですね。うちの町でもぜひ導入してほしいです〜♡

  2. 公園にパソコンを持ち込む働き方、最初は驚きましたが、お子さんや地域とのふれあいが深まるのは素晴らしいですね。孫と散歩中、こういう光景を見かけるのが楽しみです。

  3. めっちゃ斬新!自然の中で勉強したり働けるなんて集中できそう。町全体がゆるくつながってる感じ、今どきでイイって思いました。

  4. 毎朝ワンちゃんの散歩で公園を利用していますが、最近はパークレット・オフィスに楽しそうな声が増えて、町が明るくなった気がします。みなさん、お仕事がんばってくださいね。

  5. 本当に心がほっと温かくなるニュースですね。焼き菓子を分け合うなんて、なんだか昔懐かしいご近所付き合いも復活してうれしくなりました。もっとこんな町が増えたらいいなあ。