とある週末、緑豊かな市民公園で、七色に塗られた新しいベンチが次々と設置され、のんびり歩く人々の間に思わぬ会話の輪が広がり始めました。誰もが座れる場所を目指したこのプロジェクトのきっかけは、一人のノンバイナリーの青年、久賀陽(はる)さん(27)の小さな願いでした。
久賀さんは、自分と家族、そしてパートナーとともにこの街に暮らし始めて3年。性別にとらわれず、安心して過ごせる公共スペースがもっと増えたらいいのに——そんな気持ちから、地元のLGBTQ+支援団体『イロドリリンク』に相談。彼らの後押しを受けて、『カラフル共生ベンチ』プロジェクトを提案しました。市役所職員の仁科由利恵さん(35)も共感し、「色彩心理士」の資格を持つ高井威(たける)さん(54)とともにチームを組み、さまざまな色や形のベンチを手作りで企画。公園に集う子どもたちがペイントを手伝い、地域全体で“色を楽しむ”ムードが広まりました。
ベンチ設置当日、通りすがりの高齢者グループやお散歩中の親子が立ち止まり、「なんて素敵!」と笑顔に。陽さんは『どんな人も、どんな気持ちの日も、ここに座れば誰かが横にいる。居場所ってきっとこういうものだと思うんです』と静かに語りました。カラフルなベンチの脇には、“ここにいるあなたが大切”と書かれた小さなメッセージ札も添えられています。
やがて、ベンチをきっかけにSNS上では『今日もカラフルベンチでおしゃべりできた』『初めて会った人と虹色ベンチでお弁当を食べた』といった声が相次ぎ、地域のカフェ“ミライノット”では週末ごとにインクルージョンを考えるミニお話会も開催されるように。市では職員向けのジェンダー平等研修や、パートナーシップ証明書発行の窓口に、これと同じ“カラフルクッション”を設置し「どの性や関係性も包み込む行政に」と前向きな姿勢を打ち出しています。
『たまたま隣に座っただけで、人生の話が自然と始まる。こんな小さなインクルージョンが積み重なることで、異性愛規範に縛られず、誰の夢もそっと応援し合える街になる気がしています』と、久賀さんははにかみながら言います。カラフルベンチプロジェクトは、色とやさしさを手に、都市の片隅から社会の景色を静かに変えつつあるようです。



コメント
公園で子どもたちと一緒にカラフルベンチを見かけて、自然と話しかけるきっかけになりました。誰でも安心して座れる場所って素敵ですね!陽さんやみなさんの温かい気持ちに、こちらも元気をもらいました。
最近のニュースに珍しく、心がほんわかしました。年を重ねると、どんどん人との会話が減るものですが、こういった場所が増えることで世代を超えて交流できるのはとても嬉しいです。ベンチに座るのが楽しみになりました。
レインボーベンチ、SNSで話題になってて気になってましたが、背景にこんな温かいストーリーがあったんですね。自分もインクルーシブな場づくり、学園祭でやってみたくなりました!
街のカフェでお話会が開かれるようになって、毎週末がすごく楽しみになりました。カラフルベンチで出会った人と自然に友だちになれたの、なんだか不思議な幸せです。これからも優しい企画を続けてほしいです!
最初はちょっと派手かなと思ったけど、今ではこのベンチを見るたび明るい気持ちになります。自分も仕事帰りによく座って癒されてます。“ここにいるあなたが大切”ってメッセージに毎回じーんとしてます。