喜鏡橋の“笑顔パレード”――隔たりを忘れる一日、町に舞う家族のリボン

春の日差しの中、カラフルなリボンを身につけた多世代の人々が橋の上で交流する様子の写真。 分断社会
喜鏡橋の“笑顔パレード”で、さまざまな背景の人々がリボンを身につけ笑顔でつながりました。

時には町じゅうを分け隔てる川も、美しい橋ひとつで心が繋がる瞬間があります。この春、葛野市を南北に分断する「喜鏡橋」で開かれた光景は、誰もが思わず笑顔になってしまう、そんな奇跡の一日となりました。

葛野市には、昔から“南北問題”と言われる溝がありました。仕事や家の違い、世代や貧富、考え方も異なる人々が橋を隔てて暮らしてきました。それぞれ他人事になりがちな町で、今年、初めて橋の上で『笑顔パレード』が企画されました。発案者は75歳の元教員・長井捺子さん。昨年、ふとベンチで橋を眺めている時、すれ違う家族連れやワーキングプアの若者、移住してきた高齢夫婦が皆どこかうつむきがちなことに“寂しさ”を覚えたといいます。

「誰もが主役になれる時間を―」と考えた長井さんは、町内会とSNSで募集を開始。参加条件は『好きな色のリボンを身につけること』だけ、年齢や国籍、職業や暮らしの状況も問わない自由な集いへと広がりました。パレード当日、朝から虹色のリボンをつけた人々が続々と橋に集まり、それぞれの『家族のカタチ』をテーマに写真を撮り合いました。ベビーカーを押す若い夫婦の隣で、働きながら通う専門学校生とその祖母が手を取り合い、川向こうに住む高齢者と小学生たちがシールを交換。普段は言葉を交わすことのない人々が自然と繋がり、小さな自己紹介の輪が広がりました。

また当日、橋の中央には『みんなの窓』というガラスアートが設けられ、希望や悩み、将来への小さな夢を書き込めるようになっていました。『差別のない社会を』『どんな家族も否定されませんように』『今日のごはんを誰かと食べたい』――色とりどりの声が集まり、夕暮れ時には夕日の中で輝きました。その側では、ボランティアの大学生グループ“橋みらい隊”がワーキングプア世帯や高齢者世帯へ手作りのサンドイッチや温かいお茶を配り、ほっとする空気を作り出していました。

SNS上でも「うちの祖母が橋で歌を歌いました!」「生まれて初めて隣町の友達ができた」「家族って血縁だけじゃなくていいよね」など、パレードの様子が続々と拡散。一時は陰謀論で対立していた町のネット掲示板にも、お互いを思いやる言葉の投稿が増えたといいます。専門家の遠野麻紀社会福祉士は「物理的な橋が心の橋にもなった好例。町ごと家族になったようだ」と語っています。翌朝、橋の欄干に残ったリボンのひとつひとつが、葛野市の新しい絆と希望を物語っています。

コメント

  1. 小さな子どもと一緒に読んで、ほっこりしました。普段、他のご家族と交流したくてもきっかけがなくて…こんな心温まるイベントがあったら参加したいなぁと思います。リボンだけで参加できる自由な雰囲気、素敵ですね!

  2. いやぁ、わしも若い頃はいろんなことで町がギスギスしていたもんです。今こんなふうに皆で橋の上で笑える日が来るなんて、ちょっと涙ぐんでしまいました。長井さん、ほんとに頭が下がります。

  3. 最近の社会は生きづらいなって思うことばかりだったけど、この記事を読んで、少し元気が出ました。『みんなの窓』で自分の夢や悩みを自由に書ける場所って、めちゃくちゃいいアイデアですねぇ。自分の町でもやってほしいです!