84歳のランナーがつなぐ“桜の森”オンラインマラソン、町全体に笑顔の連鎖

満開の桜並木の下で、年配のランナーが人々と交流しながら歩いている写真。 ランニング・マラソン
春の桜並木で世代や立場を越えてつながる町民たちの温かな一場面。

山口県の小さな町で、町民が心待ちにしていた春の恒例イベント――「桜の森オンラインマラソン」が開催された。今年、ひときわ注目を集めたのは、最多参加回数を誇る84歳のランナー・榊原緑蔵(さかきばらりょくぞう)さん。彼の走りが、世代や立場を越えて人々をひとつにつなげる“奇跡のバトン”となった。

オンライン形式となって5年目となるこの大会では、各自が好きなコースや時間で完走に挑む。榊原さんは自宅近くの桜並木をゆっくりと歩み始めた。事前にSNSで『散歩のペースですが、誰でも一緒に走りましょう』と呼びかけていたところ、小学生から主婦、地元の書店員、さらには在宅勤務の会社員まで、思い思いの格好で榊原さんのGPSを見守りながら“偶然”同じ桜並木に集まることとなった。

榊原さんが静かに1km…2km…と進むたび、沿道にはリモートで実況をする高校生の声と一緒に、見知らぬ参加者同士の温かな拍手が依然と続く。途中、ふとしたことから自家製の塩飴を持参した農家の佐原文子さん(60)が『どうぞ』と榊原さんに手渡すと、そのやさしいやりとりに感動した若い父親がスマートフォンを通して全世界の参加者にライブ配信。『リアルタイムでつながるって、こんなに優しい景色だなんて』というコメントがSNSで拡散した。

大会運営の北嶋涼真さん(42)は『榊原さんはたった今、通算走行距離500kmを突破。“1kmはひとつの思い出”というのがモットーで、その記録は町の宝物です』とうれしそうに語る。町役場のロビーには、榊原さんのランニングシューズの足跡と笑顔の写真を一緒に飾り、まるで全員が主役になるような特設ギャラリーも用意された。

後日、参加者たちはオンライン上でそれぞれのラン体験やありがとうのメッセージを投稿し合った。保育士の木場里美さん(35)は『子どもと一緒に榊原さんの後ろ姿を追いかけた時間が、春の思い出になりました』とコメント。『走る速度は違っても、笑顔を分け合えることの方が、早さより大事なのかもしれません』と榊原さん自身も振り返る。桜の花びらが舞う静かな町に、今年も人の絆が満開の春をもたらした。

コメント

  1. 記事を読みながら、思わず涙が出ました。子どもたちと一緒に榊原さんを応援できて、普段の春よりとても心が温かくなりました!町がひとつになる素敵なイベントですね。

  2. 榊原さんのご活躍、本当に励みになります。同じ高齢者として、年齢に関係なく地域の輪に加われる姿に勇気をもらいました。来年は私も一緒に桜並木を歩いてみようかな。

  3. オンライン実況に参加してました!世代も知らない人同士も、どんどんつながっていくのが楽しくて。やさしさが広がるってこういうことなんだなって、改めて感じました。

  4. 普段はなかなか皆さんとお会いできませんが、こうして笑顔がいっぱいのイベントが続くと、町に住んでいてよかったなあと感じます。榊原さん、ありがとうございます!

  5. 仕事の息抜きに桜の森を歩いてみたら、たくさんの優しさに出会えてびっくりしました。リアルとオンラインがこんなに素敵につながるなんて、今の時代も悪くないですね!