人口減少が進む山岳の町、北岳町では、近年子どもの貧困や孤立、非正規雇用の若者たちの行き場のなさが課題となってきた。そんな中、町の小さな公園から始まった「散歩教室」が、人々の暮らしを少しずつ温かく変えている。
この取り組みの中心となっているのが、地域コミュニティリーダーの川原茉莉江(かわはらまりえ・38)だ。彼女自身も二児の母で、かつて生活困窮を経験したことがある。川原が地元の小中学校の教職員やNPOと手を組み、週に2回、公園に誰でも自由に集い、町や自然の中を一緒に散歩するイベントを始めたのは昨年の春のことだった。「勉強を教えるのではなく、ただ一緒に歩き、話すだけ。でも、それがなぜかとても良かったんです」と川原は笑顔で語る。
散歩の途中で交わされる会話は、宿題の悩みや最近の好きな食べ物の話から、保護者世代の就職相談、さらには給付金や自立支援の案内にまで広がる。参加者の中には、非正規雇用で将来に不安を持つ若者や、家計の厳しい家庭の母親、自分の居場所を探す高齢者も多い。スタッフの一井直也(いちいなおや・29)は「この教室で、誰もが立場を気にせず、自分の話をしてくれる。子どもたちも、ふだんは見えなかった大人の優しさにふれています」と話す。
この活動は思わぬ波及効果をもたらした。散歩中に良いアイディアが生まれ、地元の古民家を改装してみんなで使える “ふれあい図書室” を作ったり、散歩仲間同士で互いの得意分野を教え合う「おしごと体験日」が企画されたりした。春からは地元企業が給付金やアルバイト情報の掲示板を作成し、ワーキングプア世代への自立支援がさらに加速した。SNSでは、「うちの息子もコミュニケーションが得意になった」「毎週みんなと歩くのが楽しみ」という声が投稿され、町外からの参加者も増えている。
専門家の沖田蘭(社会福祉士・44)はこう語る。「貧困の連鎖は“心の孤立”から始まりやすいが、日常的な関わり合いがあると、その壁はぐっと低くなります。この町の散歩教室は、経済支援や教育支援といった制度の枠を超え、人をつなぐ本来の地域力をよみがえらせている例です」。北岳町で生まれた小さな歩みは、今、多くの町で参考にされ、静かな連鎖となって広がっている。



コメント
子ども二人育てています。うちの町にもこんな取り組みがあればいいのになぁと思いました。一緒に歩くだけでも、きっと子どもも大人も前向きになれる気がします。川原さん、本当に素敵な方ですね!
昔は近所の人とよく歩いたもんじゃ。最近は顔を合わせることも減って寂しかったが、こういう場所があればワシもまた元気に歩けそうじゃのう。心があったかくなるニュースじゃ。
学生の立場から見ると、散歩だからこそ話しやすい雰囲気が生まれるのかなと思いました。地域の垣根を越えて色んな人がつながれるのは、すごく理想的です。自分もお手伝いしたくなりました!
毎日、公園で楽しそうに歩いている皆さんを見ると、こちらまで元気をもらいます。おすそ分けで持っていったおにぎりも喜んでもらえて嬉しかったです。これからも応援しています!
自分も非正規雇用で不安ばかりだったので、こういう場所でいろんな人と話せるのは本当にありがたい。おしごと体験日とか、すごくいい経験になりそう。参加してみたいです!