香りで記憶がつながる?氷川煎餅工房「アロマパズル」が大ヒット

煎餅工房のカウンターで若い店員がカラフルな煎餅を年配女性と子どもに手渡している様子のリアルな写真。 商品開発
氷川煎餅工房で世代を越えて「アロマパズル煎餅」を楽しむ光景。

小さな商店街にひっそりと佇む氷川煎餅工房が、全国の話題をさらっている。香りで人々の思い出や気持ちをつなぐという不思議な商品「アロマパズル煎餅」が、心温まるストーリーとともに広がり続けているのだ。

氷川煎餅工房は創業90年、家族三代で営まれる焼き煎餅店だ。4代目見習いとして今年から店に立つ氷川康斗(28)は、市場調査で『近隣住民の半分が、懐かしい香りを感じられるお菓子に憧れている』というデータを発見した。そこに目をつけ、店の伝統の味付けと最新のデザイン思考を融合し、『五感で遊ぶ煎餅』を構想。自ら地域の小学生や高齢者20人と商品開発ワークショップを重ね、香り、形、色彩のABテストを繰り返した。

話題となったのは、単なる味のバリエーションに留まらない、その『物語性』だ。例えば、あるピースを噛めば朝顔の庭の香りがふわり、次のピースでは遠足の草原を思い出す桜の匂い。パッケージにも工夫を凝らし、購入者が自由に絵や思い出のエピソードを書き込める台紙をセット。『贈り物にしたら祖母が涙ぐんで喜んでくれた』『幼馴染と一緒に思い出話で盛り上がった』など、SNS上には温かな体験談が次々と投稿されている。

販売戦略も型破りだ。週1回、氷川康斗がオンラインで『香りの共感シェア会』というイベントを開催。煎餅片手に、全国各地のお客さんがズームで集い、どんな思い出が蘇ったか語り合うのだ。この取り組みは業界でも注目され、競合の煎餅店主・一ノ瀬薫(53)も『単なる差別化を超え、地域の絆を生み出すマーケティングだ』と賞賛している。

工房周辺のコミュニティでも思わぬ変化が現れた。子ども会のおやつとして『アロマパズル煎餅』が導入されてから、普段はあまり話さない世代間の交流が活発に。お互いの思い出をシェアする『香りの掲示板』には、小学生からお年寄りまでのメッセージがあふれている。専門家の佐賀明美(マーケティング研究者)は『感情と記憶をつなぐ商品体験は、これからの街づくりや商品開発のヒントになる』と語る。

『香りで記憶を分かち合うことで、人と人がもっと優しくなれるかもしれない』と語る康斗さん。来月には、地元の高校とコラボした新シリーズも発売予定だという。この小さな工房発の温かいイノベーションが、今後どんな笑顔を生み出すのか、ますます目が離せない。

コメント