今年、ウェアラブル・モーションキャプチャが普及したことで、世界中の人々が自身の動きや表情を忠実に仮想空間へ再現できるようになった。そんな中、ひとつの心温まるプロジェクトが始動し、静かな感動を広げている。地域も世代も超えて、匿名の参加者たちがDAO(自律分散型組織)によって導かれ、メタバース上で“バーチャル交響楽団”を結成したのだ。
首謀者は、北海道・帯広に住む農業研修生の東風谷航太朗(22)。長年の憧れだった「世界中と音楽でつながる」夢を叶えようとひらめいた。ある晩、彼は家族と古いピアノを囲み、「もし離れた人と一緒に演奏できたら……」と願ったという。その数日後、メタバース専門家のマルタ・シェリング博士(45)が主宰するグローバルDAOに偶然参加し、同じ想いを持つ仲間と出会った。そこから物語は動き出した。
このDAOは、AIによる自動翻訳チャットで誰でも議論に参加でき、各国から集うメンバーが提案や投票で運営方針を決定。用意されたモーションキャプチャ対応ウェアラブルで、各地の子どもや高齢者、障がい者もアバターで自由に楽器を“演奏”できるよう調整された。メンバーのひとり、スペインのオルティス老人(69)は「耳が遠い私にも、みんなの感情が伝わる。不思議なテクノロジーです」と、仮想楽器を抱えて微笑む。演奏中は、鼓動や手のぬくもりもアバター上に再現され、小さな失敗もみんなで笑いあう雰囲気だ。
メタバース交響楽団の第1回コンサートは、朝と夕に世界各地の仮想広場で開催された。観客はDAOの投票により選ばれた“バーチャル街角”に集い、それぞれのデバイスを通じてアバターたちの即興演奏に耳を傾けた。SNSには、「ドイツの子どもとネパールの先生が同じ楽譜をめくる瞬間に感動した」「見知らぬ人のバイオリンと私のリコーダーがハーモニーを作った」といった幸せな声が相次いだ。
更に、DAOでは楽団の活動収益を地方の音楽普及や福祉に還元する仕組みが導入されている。音楽に触れる機会の少ない地域で、ウェアラブル機器の貸出や練習会も行われているという。東風谷氏は「地球の裏側でも、同じ音色を楽しんでもらえたら嬉しいです」と笑った。技術が人の心をつなげ、現実世界にも優しい波紋を広げている。
コメント
小学生の息子が音楽好きなので、こういう交響楽団が現実になったら、きっと世界中のお友達と演奏できて素敵ですね!子どもも高齢者も楽しめるなんて、本当に温かいプロジェクトだと思います。
私はもう耳が少し遠いですが、記事のオルティスさんの言葉、とても共感します。年齢や体のハンデを越えて、みんなで音を楽しめるなんて夢のよう。そういう新しいテクノロジーがあるからこそできる、素晴らしい時代ですね。
ちょっと衝撃!メタバースで世界の人たちとリアルタイムで合奏とか、まさにSFだと思ってました。推しのバンドもこの仕組みで仮想ライブしてくれないかな〜。将来がワクワクします。
帯広の青年がはじめたなんて、道産子として誇らしいです!知らない国の人と音楽でつながれるなんて、本当に心が温かくなりました。今度うちの町内会の集まりでも話してみたいです。
実はちょっと照れ屋で、人前で演奏したことなかったんですが、アバターなら失敗してもみんなで笑えるっていいですね。こんな優しい世界が広がったら、音楽がもっと身近になると思います!