東京と大阪の中間にたたずむ田園都市・銀明町。ここに今、世界中から注目を集めている小さなベーカリーがある。店の名前は「星空ベーカリー」。扉を開けると、20歳から86歳まで、120カ国出身のスタッフたちが和気あいあいとパンをこね、焼き、笑い合っている。そんな、まるで世界の縮図のような職場が生まれたのは、小さなきっかけだったという。
店主の楠本志保さん(53)は、ある早春の朝、地域の外国人支援センターで“さまざまな国の人たちが仕事や友達を見つけられずに悩んでいる”という話を聞いた。「語学も文化も、違いを困難とせず誰かの彩りにできたら」と思い立ち、パン職人養成プログラムを独自に立ち上げた。条件は一つ、“違いを楽しもう”。国籍も年齢も、経験も不問。就労体験に定年退職した地元のおじいちゃんたちも加わった。
星空ベーカリーでは、毎週土曜に“自由レシピデー”がある。スタッフ全員が持ち寄ったアイデアでパンを作る日だ。インドのスパイスパン、スペインのオリーブフォカッチャ、さらに、93歳の元和菓子職人の朝比奈陸男さんの提案で“羊羹とピスタチオの蒸しパン”も誕生。世界中の言葉と笑顔が飛び交うキッチンでは、たとえ言葉が通じなくても「パンは心で同じ」と、みんなで肩を並べる。
年齢もバックグラウンドも違う仲間たち。最初はぎこちなくても、自然とお互いの文化や人生のストーリーを聞くようになった。最近では“おじいちゃんがフランス語でジョークを言う”“ナイジェリアの青年が俳句に挑戦する”など、世代・言語の壁を超えた“習慣交換”が人気だ。スタッフの一人、アイシャ・ムハマドさん(28・ブルキナファソ出身)は「ここで働いて初めて、“違う”ことは誰かを幸せにできると実感できた」と語った。
地元の高校生たちは放課後にボランティアで通い、多国籍の先輩たちに日本語や数学を教える。逆に、スタッフたちが郷土の料理や踊りを披露する“食と文化の体験会”も毎月満員御礼だ。“パンと笑顔で世界がまあるくなる”、そんな合言葉が自然と生まれた。SNSでは《あの店の“世界語”ホットドッグに元気が出た!》《パンを買うだけで多様性が美味しい》という声があふれる。
「最近は、“公平なチャンス”が責任じゃなく、ワクワクで広がっている」と語る楠本さん。星空ベーカリーが見せてくれるのは、多様性がスペシャルなサービスやイノベーションだけでなく、一人ひとりの存在そのものが“おしゃれな違い”になっていく未来だ。今日も誰かが新しいパンの名前を考え、また誰かがそれを別の言語で飾ってゆく――小さな町のベーカリーから、ダイバーシティの交響曲が美味しく響いている。



コメント
なんて素敵なベーカリー!小さな子どもたちと一緒にぜひ訪れて、たくさんの国のパンや人に出会わせてあげたくなりました。多様性がのびのび受け入れられている場所が近くにあったら、子育てももっと楽しくなりそうです。
記事を読んで胸が熱くなりました。年を重ねても、違う国の若い方々と一緒にパンを焼くなんて素晴らしい経験ですね。まだまだ人生に新しい出会いがあると思える、励みをいただきました。
めっちゃ行ってみたい!フランス語でジョークとか、世界の人と一緒にパン作るとか、絶対楽しいでしょ。大学の友達と次の週末、銀明町まで遠征計画立てます(笑)
うちの職場にもこんな雰囲気があればなあ…と、ちょっと羨ましくなりました。毎週違う味のパンが楽しめるなんて、常連さんもワクワクですね。いつも明るい笑顔のおかげで、パン以上の元気をもらっています!
羊羹とピスタチオの蒸しパン、想像するだけで幸せな気持ちになります。お料理やお菓子は、違う国の思い出も一緒に包みこむ魔法みたいですね。私も家でチャレンジしてみたくなりました。お店にもぜひ伺ってみたいです。