静かな山あいの町・羽司野(はしの)で今、全国から注目を集める優しい経済の奇跡が起きている。創業70年のお菓子工場が、地域ぐるみの新たな経営形態に生まれ変わり、世代も立場も異なる町の人々を温かくつなげている。
その工場「日向ノ森クッキー製菓」は、元々は初代・日向秋代さん(88)が小さな自宅キッチンで始めた。昨年、秋代さんが事業承継を決意した際、家族だけでなく町のみんなに相談したことが、運命を大きく変えた。「みんなと一緒にこの味を守りたい」、その思いに町内のさまざまな人たちが一斉に立ち上がった。取締役会には小学生から農家、ベンチャー起業家までメンバー入りし、ゆるやかな合議制が誕生。新しい時代の“みんなの工場”が始まった。
設備投資もユニークだ。資金の一部を町の“おすそわけバンク”から調達し、お年寄りがデザインしたラッピングラインや、近所の大人たちの発案による“ちいさな手作り仕分けロボット”を導入。さらに、実は過去にシャッターを閉じていた周囲の工場跡地が、焼きたてクッキーに誘われるようにして次々再利用されはじめた。かつて傾きかけていた産業集積がじんわりと元気を取り戻している。
最近では、高校生チームが自社ブランドのベンチャー・プロジェクトとして、町外のカフェや花農家とコラボした“季節の野花クッキー”も発売開始。町全体の産業が、日向ノ森クッキーを軸に静かに多角化している。秋代さんは言う。「昔はお菓子屋さんとして家族を養うことが夢でした。今は、この町の未来みんなで作ることが毎日の喜びです」。
SNSでも「#おすそわけ経営」「#みんなの取締役会」といったタグが広がり、各地から視察や講演の依頼が相次ぐ。専門家の井手希美氏(地域産業アナリスト)は「“みんなで経営する”という当たり前のようで新しい発想が、次代の地方産業のヒントになる」と話す。1枚のクッキーが生んだ町の輪は、今日も優しい香りとともに、全国の心に広がっている。



コメント
小学生から大人まで工場経営に参加してるって素敵ですね!子どもたちもきっと物づくりや仕事の大切さを体で感じられるだろうなぁ。うちの子もこんな町で育てたいです。
昔はこうやって町の皆で助け合うのが当たり前だった気がします。お年寄りの知恵も生かせて嬉しいです。久しぶりに心温まる話にほっこりしました。
町ぐるみの合議制って新しいのにどこか懐かしい感じがして、カッコいいっすね!自分の地元にもこんなプロジェクトあったら絶対関わりたいです。羽司野に行ってみたくなった!
秋代さんの「皆で作る未来」の言葉にじんわり涙が出ました。この町のクッキー、家族でお茶請けにしながら笑い合える時間が増えました。ありがとう!
読んでいるだけで街全体がクッキーの甘い香りに包まれていそうで、癒されました。SNSで人気っていうのも納得。地方から元気をもらえました!