鳩時計のふしぎな力――空き家が地域の“防災希望灯台”へ変身

早朝の高原の町で、玄関が優しく光る洋館に、住民たちが集まり鳩時計を見上げている様子の写真。 地域コミュニティ
防災希望灯台となった洋館に、人々が鳩時計の合図を頼りに集まる。

ひと昔前から空き家が増え、どこか寂しさがただよう高原の町・北上村。その中に、一つだけ時間を告げ続ける古い鳩時計付きの洋館が残っていた。退去から20年、住人のいない館が今年、思いがけないかたちで地域に温かな旋風を巻き起こしている。

北上村在住の会社員・山室寛太(38)は、幼いころからあの洋館の鳩時計に親しんできた。「毎日8時に必ず鳩が飛び出して正確に鳴くんです。町の人は合図のように朝ごはんや登校の準備をしていました」。だが、館が空き家になった後も、なぜか鳩時計は一度も止まることがなかった。

昨年の夏、一帯を豪雨が襲い、大規模停電が発生。あちこちで連絡網が途切れるなか、洋館の鳩時計だけはなぜか動き続けていた。「カッコーの声が響くたび、ここに避難すればいいと自然に集まれた」と近所の主婦・大谷祥子(61)。館の玄関下にはなぜか弱い光が灯り、古い地下倉庫からは乾パンや水の備蓄、さらには懐中電灯まで見つかった。

この不思議な現象に、地元の防災士・岡里柚葉(52)は「何者かの善意がタイムカプセルのように仕掛けられていたのでしょう。けれど、鳩時計が“停電時だけ”自動で点灯メロディを流したことは、科学的に説明がつきません」と驚きを隠さない。町のSNSでも《あの時計は“命の鐘”》《誰かが今も守ってくれているみたい》と感謝を込めた投稿が相次いだ。

豪雨後、この洋館は『みんなの防災希望灯台』と名付けられた。地元有志の手で定期的な清掃と備蓄の補充が行われ、今では毎月の家庭防災訓練の集合場所にもなっている。子どもたちは鳩時計の仕組みに興味津々で、夏休みには自分だけの小さな防災工作を館に持ち寄るのが恒例になった。

山室さんは「ただの空き家だと思っていた場所が、みんなをつなぐ心の灯台になっている。今日もあの鳩時計が、“そろそろご飯の時間だよ”“また明日もがんばろう”と声をかけてくれている気がするんです」と、優しい笑顔を見せた。時計と共に時を刻む洋館は、今日も地域の人たちの心に明かりを灯し続けている。

コメント

  1. 小学生の息子と記事を読みました。鳩時計のカッコーの音でみんなに安心を届けたお話、とても感動しています。こういうやさしい力が実際の町にも広がるといいですね。親子でまた防災についても考えるきっかけになりました。

  2. いやはや、懐かしいや。昔うちにも鳩時計があってなあ、今も町のみんなで守っているのが嬉しいね。ワシらの世代が作った町が、子供たちには希望の場所であってほしい。洋館が命の灯台になるとは、年寄りにも励みになります。

  3. 高校生です。正直、空き家ってちょっと怖いイメージだったけど、みんなで守ったり、イベントにしたりするの素敵だと思いました!私もあの鳩時計の音、直接聞いてみたいです。

  4. お隣に住んでいます。豪雨の夜、洋館のほんのりした灯りにたどり着いた時の安心感、今でも忘れません。鳩時計と誰かの優しさが、町の心を守っているんだなぁと記事を読んで改めて感じました。

  5. 普段は単身赴任でたまにしか帰れないけど、子どもから『防災灯台で工作したよ!』ってビデオ通話で見せてもらいました。みんなで守る場所があるって、子どもたちにも大切な思い出になると思います。本当に素敵な町ですね。