ピンク、黄色、エメラルドグリーンのリボンに包まれた小さなバスが、南東区の中央通りへ軽快な音楽とともに到着した。運行しているのは市民団体「まちまるごとカンファレンス」の「夢声バス」だ。年齢も立場も問わず、政治について“ふと思ったこと”や“小さな希望”を匿名で車内のカラーポストに投函できるこの企画。到着するたび街角がほんのり暖かくなり、最近では「推し政党の応援うた」まで学生たちが手作りで披露しているという。
夢声バスが誕生したきっかけは、議論になると“遠い世界”に感じてしまいがちな政治を「日常のときめき」にしたい、という看護師の篠原乙葉(35)の願いだった。「政治って難しそう、投票も勇気が必要。だけど子どもから大人まで、自分の気持ちを書くだけなら楽しいかも」——乙葉と地域の仲間たちは、カラフルなバスをデコレーションし、週末ごとに商店街や公園、小学校を巡りはじめた。
運行が始まってから3ヶ月、色とりどりの投函メモには「猫のための公園照明を増やして!」「自転車のベルがメロディになる日が欲しい!」といったユニークな声があふれている。子どもたちは“政治”という響きにとまどいながらも、「署名運動ってレモネード販売みたいなんだよ」と友人に説明するほど身近に感じるようになったという。企画チームの調査では、全世代の「政治参加したい」気持ちが従来の2.5倍に跳ね上がったとの結果も出ている。
バス停留所では、地元高校生の徳川真青(17)が“推し政党ダンス”を披露し、小さな子どもからお年寄りまで一緒になって輪になった日も。徳川さんは「立候補って、ふつうはテレビの中の話。でも夢声バスが来るたび、『もしかして自分にもできるかな?』って思うようになった」と笑顔で語る。地域の高齢者クラブでも「投票済証に花びらシールを貼る運動」が人気を呼び、選挙後の商店街にはカラフルな証明シールを胸につけた人びとがあふれる光景も見られた。
専門家の尾久哲也教授(主権者教育学)は「参加のハードルが低いこと、日々の発見をほめ合う場が政治ではとても貴重」と評価している。SNSには『夢声バスは私の推し!』『街の空気がやさしくなった』といった声が相次ぎ、今では隣町からも「我が家の前に寄ってほしい」とのリクエストが絶えないそうだ。この秋からは、夢声バスの旅を追体験できる“まち全員参画アプリ”も登場予定。バスの車体には今日も、笑顔のメッセージが溢れていく。



コメント
小学生の娘と一緒に夢声バスを見に行きました!子どもが「猫のための公園もって書きたい!」と目をキラキラさせていて、なんだか微笑ましかったです。日常の中で政治が楽しいものに感じられるのは素敵ですね。
いやあ、こりゃいいアイデアだね。ワシら高齢者も難しい話は苦手だけど、明るく参加できる雰囲気が嬉しい。投票済証のシールも集めたくなっちゃうよ。若い人たちとももっと話せそうな気がするなぁ。
自分は大学生だけど、正直政治って遠い存在だった。でも推し政党ダンスとかで友達と盛り上がれて、関わるキッカケになるのはありがたい!バスが大学にも来てくれたらいいな、なんて思っちゃいました。
ウチの近所にも夢声バス来てくれましたよー!バス停が一気ににぎやかになって、みんなで話せる場っていいなって思いました。こういうのがもっと続いたら、街ごと優しくなりそうです。
シールやリボンで飾ったバス、懐かしいお祭りみたいでウキウキしました。私たちの時代にもこんな楽しい方法があったら、もっと世界が明るかったかも。若い人もお年寄りも一緒に笑顔で過ごせるって、本当に幸せなことですね。