季節の花が咲き始める午前、岸田卓海(47)は、配送トラックの荷台いっぱいに積まれたカラフルな弁当箱を見てほほ笑む。彼が立ち上げた「ぬくもりサブスク弁当プロジェクト」は、人口6000人の石見町、渓流の美しい彩坂市、山間の上蔵村を、月替わりの手作り弁当で結ぶD2Cサービスだ。箱を開けるたびに手紙やメッセージ、そしてその町の“今”が詰まっているという。
このサービスの始まりは、石見町の商店街で食品ロス削減をテーマに開かれたライブコマース配信だった。SNSで知り合った彩坂市の農家・草谷真奈(31)、上蔵村の給食調理員・蔵本佳奈(56)が、地域の惣菜や旬の野菜を詰めあった「みんなのごはんBOX」を企画。初回配信で300件超の注文が集まり、たちまち瞬く間に全国へ口コミが広がった。
このプロジェクト最大の特徴は、毎回弁当箱のふた裏に誰かの手書きメモや応援イラストが添えられている点だ。リテンションマーケティングの視点で、専用SNSグループを用いて日々の感想やお弁当リクエストをやり取りし、CRM担当の菰野暁恵(27)が住民同士の“ほめ合いキャンペーン”を運営。毎月更新のサブスクリプション加入者は、配送ごとに別の町の誰かと「ぬくもり文通」がスタートする仕組みだ。
サービス開始から5か月、町の交流は予想を超えて広がった。フルフィルメントを請け負う地元運送会社の協力で、離れた家族どうしや見知らぬ住民同士が互いに手料理を贈り合う例も増え、年末には3町合同の“ありがとう祭”が開催された。小学生ユニット『虹色はしご』がSNS動画で披露した「お弁当の歌」は1万回再生を突破。”初めて手紙を書いた” “遠くの町でも、誰かが自分を思い出してくれた” など、温かな投稿が後を絶たない。
マーケティングアナリストの宮ノ前理沙(42)は、「この仕組みは単なる定期購入を超え、地域の心をつなぐ新しいD2C体験だ」と評価する。一箱ひと箱が小さな縁を生み、その積み重ねが地域全体にやさしさを拡げる――。岸田は「どこかで誰かを思いながら作ったご飯には、特別な力がある」と語る。今日も彩坂川の水音とともに、次の“ぬくもり便”が町をめぐる。


コメント
毎日子どものお弁当作りにバタバタしているので、こういう温かな仕組みが本当にうれしく感じます。知らない町のおいしい味や手書きメッセージ、子どもにとっても素敵な体験になりそうですね!いつか親子で参加したいです。
昔はよく近所同士で野菜やお惣菜を分け合ったものですが、こうやって今風に交流が広がるのはとてもうれしいですね。私も誰かに手紙を書いてみたくなりました。頭と心が若返ります。
SNSで見かけて気になってました!普段メールばっかだけど、誰かのあったかい文字が入ってるお弁当開けるの、めっちゃ楽しそう。学生向けのプランとかあったら利用してみたいです!